型焼きフォカッチャ


パンの基本 +
「高加水フォカッチャ」の作り方。
 
「火で焼いたもの」という意味をもつ、イタリアの伝統の食事パン。オリーブオイルとともに生地の表層にピケをすることで、香ばしく、歯切れよく、また比較的、平に焼き上げます。

高加水フォカッチャ
21枚取りバット 1枚分

【生地】
・マニトバオーロ (100%) 200g
・水 (79%) 158g
・ルヴァンリキッドTA210 (12%) 24g
・インスタントドライイースト (0.1%) 0.2g
・塩 (1.8%) 3.6g
・オリーブオイル (4%) 8g

【トッピング】
・ガーリックオイル
・岩塩
・ブラックペッパー


【焼成】
予熱 300℃
焼成 300℃で10-13分
ポイント
焼成温度はお持ちのオーブンに合わせて調整してください。
強力粉→マニトバ・オーロ
酵母→ルヴァンリキッドTA210(1:1.1) + サフ赤
ルヴァンリキッドの作り方

■高加水フォカッチャの作り方

 フロー

■生地を作る

混ぜあげ温度
10-25℃

オートリーズ
30-60分

捏ねあげ温度
20-23℃

予備発酵 + 一次発酵/冷蔵発酵
25℃ / 膨倍率1.5倍
冷蔵 / 12-18時間 / 膨倍率2倍

最終発酵
25-28℃ / 生地が緩むまで30-40分

焼成
予熱 300℃
焼成 300℃ / 10-13分

フローは目安です。生地の状態を見極めながら、各工程を調整してください。焼成温度はお持ちのオーブンに合わせて調整してください。

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強力粉、水を合わせてよく混ぜ合わせます。

混ざったらオートリーズを取ります。

オートリーズ
25℃ / 30-60分

オートリーズ30分後の生地の様子
オートリーズ60分後の生地の様子
30分と60分とで生地に差があるのがわかりますか?薄膜がまだらではなく均一に伸びて、マットな質感に変わります。油脂が入る前なので、一般的な捏ねあげ時のグルテン膜ほどではありませんが、かなり綺麗な状態になるので、確認してみてくださいね。
オートリーズは粉の水和を促し、グルテンを効率良く繋げたり、酵素を働かせる効果があります。

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酵母類を加えて混ぜ合わせます。

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塩を加えて混ぜ合わせます。

完全に混ざったら、3分ほど、ボウルの中で捏ねます。

ボウルの底に手を入れて……
生地を引っ張って引き伸ばし、折りたたみます。このくり返しです。

オイルを加える前に、生地を10分、休ませます。

レスト
25℃ / 10分

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オリーブオイルを加えます。

ボウルの中で生地を引き伸ばして折りたたみながら、オイルを馴染ませます。

こねあげ温度
20-23℃

 5

生地を15-20分、休ませます。

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折りたたみと引き伸ばしを、縦横それぞれ1回ずつ行います。

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生地を再度、15-20分、休ませます。

 8

折りたたみと引き伸ばしを、縦横それぞれ1回ずつ行います。

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予備発酵させます。

予備発酵 / フロアタイム
25℃ / 1.5-2時間 / 1.5倍

発酵膨倍率1.5倍、予備発酵後の生地です。

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冷蔵発酵させます。

冷蔵発酵
12-18時間 / 2倍

予備発酵をとっているので、生地を冷蔵庫に移してからも、4℃以下になることがなければ、発酵はゆるやかに進みます。ミツトパンのキッチンでは18時間で生地が2倍になることを確認していますが、もし冷蔵発酵が思う通りに進まなかった場合は、復温工程で生地を2倍まで育ててください。今回の生地は充分に伸展性のある生地ですので、生地が育っていれば、復温は取りません。

発酵膨倍率2倍の生地です。

発酵後の生地はデリケートです。ここで発酵容器やポリシートに油脂を塗っておくことの効果が発揮されます。ベテランさんは生地の取扱いや生地の損傷修復の見極めなどが上手なので、特に必要ではありません。初心者さんはここで助けられますので、抵抗がなければ、油脂を塗っておいてくださいね。

ここでグルテンを必要以上に引っ張って一部分だけ鍛えてしまったり、損傷させてしまった場合、生地の締まりや緩み、整い方にムラが出ます。生地の一部は充分に整っているのに、一部は弾性が抜けきらない……というような状況が出てくるわけです。もちろん、生地は自分自身である程度は均一化する特徴があるので、そのムラがそのままの差で焼成工程まで持ち越されることはありません。……が、丸めも成形も優しくすることが求められ、最終発酵も短いバゲットのような生地の場合は大問題です。ですから、慣れるまでは、油脂でコートすることをおすすめします。

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型入れします。

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最終発酵させます。

最終発酵
25-28℃ / 30-40分 / 生地が緩むまで

最終発酵の時間は、生地の様子に合わせて加減します。生地の透明度(今回は目視しにくいです)、生地の膨らみ、生地の緩み、気泡の入り方……教わる先生によって確認のポイントは変わってくる場合がありますが、一番大切なのは、窯に入ったときに、生地がストレスなく縦に伸びる準備ができていることです(生地によっても多少違いますけれど)。なので発酵後の生地の取扱いによって、最終発酵の時間も変わります。

型入れ時に生地に強くストレスを与えた場合、三つ折りの重なりが深かった場合
→発酵時間は長くなります
型入れ時の生地ストレスを最小限にとどめた場合、三つ折りの重なりが浅かった場合
→発酵時間は短くなります
発酵後の生地の取扱いの全ての工程が複雑に絡んでパンの仕上がりに影響するので、ご自身の大切にしたいことを明確にして、ひとつひとつ加減しながら仕上がりの確認をすると良いと思います。

発酵後の生地です。

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仕上げをします。ガーリックオイルをふりかけて、生地全体に穴をあけます。岩塩、ブラックペッパーを散らします。

フォカッチャのをどのようなフォルムに、どのような食感に焼き上げたいかによって、仕上げの穴あけの加減が変わってきます。

中心をふっくらと立ち上げたい
→全体に満遍なく軽く穴を開ける
平べったく、満遍なく気泡が入るように焼きたい
→中心から外周に向かって穴をあけ、特に中心を念入りに穴あけする

発酵後の生地の取扱いの全ての工程が複雑に絡んでパンの仕上がりに影響するので、ご自身の大切にしたいことを明確にして、ひとつひとつ加減しながら仕上がりの確認をすると良いと思います。

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焼成します。

予熱 300℃
焼成 300℃/10-13分

熱々に予熱した天板に、熱伝導率の高い琺瑯バットを直接、置いて焼きます。下火で気泡を縦に立ち上げることで、高温短時間焼成でも火通り良く、軽く焼き上げます

ご参考までにミツトパンのオーブンの実測値をお伝えしておきますね。
予熱完了時
庫内手前230℃ / 奥250℃
10分間空焚き後
庫内手前250℃ / 奥250−270℃

私はここで窯入れしています。

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完成!

今回は動画にポイントが詰まっていますので、動画をあわせてご覧ください。

■フォカッチャとは

 フォカッチャとは?

フォカッチャとは?

「火で焼いたもの」という意味の、古代ローマから伝わるイタリアの伝統の食事パン。オリーブオイルとともに生地の表層に穴をあけることで、香ばしく、歯切れよく、また比較的、たいらに焼き上げる。

本場ではデュラムセモリナ粉を配合したレシピもあるようです。日本では丸く小さく成形するフォカッチャも多いですが、イタリアでは大きなスクエア型に焼き上げ、切り分けて食べたりするのだそう。

オリーブやローズマリー、ドライトマトなどをトッピングする、食事系レシピが主流ですよね。でも砂糖やバターを散らして焼いた「フォカッチャ・ドルチェ」と呼ばれるものもあるみたい。面白いですね。それならばオイルは溶かしバターに変換して、バターの香りたっぷりで作ってみたいものです。

 フォカッチャに穴を開ける?

穴を開けないフォカッチャもあるようです。火通りを良くするためと言う方もいらっしゃいますが、いちばんは、膨らませたくないからなのかなあ、と思いながらいつも焼いています。

食事のはじめ、まず表面をはがしながら食べて、内側のモチモチした部分はメインのお料理と共に食べるのがイタリア流だそうです。だから表に具をのせて飾るんですね。なるほど。こちらの情報は又聞きなので、知識として使用される場合はご自身でもお調べください。

もちろん具をたっぷりはさんでサンドイッチにして食べるのもよくみかけますね。今回はクリームチーズ、ルッコラ、生ハム、ブラックペッパーでサンドイッチにしました。とーってもおいしかったです!

■高加水の型焼きフォカッチャで使用する酵母と製法

 ルヴァンリキッド

今回使用してる酵母はTA210のルヴァンリキッド。詳しくは「ルヴァンリキッドの作り方」をご確認ください。

ルヴァンリキッドだけでは発酵活性に不安が残りますので、今回は市販の酵母を加えています。ルサッフル社のインスタントドライイーストサフ赤です。

小麦を発酵させた発酵種特有の香りが添加できるので、仕上がりのパンの香りがガラッと変わります。ただこういった風味については完全に個人の好みに左右される問題ですので、ご自身が美味しいと思う酵母に置き換えて作っていただいてかまいません。自家製酵母の選択は、レシピの中でも最も自由度の高い部分だと思います。

もちろん市販の酵母のみで作ることもできます。こちらにはインスタントドライイーストサフ赤のみで発酵をとる配合例を載せておきますね。

イーストだけの配合例

・マニトバオーロ 100%
・水 79-80%
・インスタントドライイースト 0.1%
・塩 1.8%
・オリーブオイル 4%

 オートリーズ

ミキシングの途中に生地を休ませ、二段階でミキシングを行う方法。もともとはフランスパンの製法。小麦粉、水(+モルト)を合わせてミキシングしてから、生地を20-30分休ませ、その後、酵母と塩を加えてミキシングを終える。

生地中の酵素分解を促し、旨味と甘味を増強する。生地の緊張を和らげ、伸びのいい状態にして、ゆるやかにグルテンをつなげる。酵素の働きのおかげで、オートリーズ後に加える酵母の発酵がスムーズになる。

 後塩法

アトジオ法、コウエン法。ミキシングの際に、塩を後入れする製パン法。塩を加える前に小麦に水を充分に吸わせ、効率よく水和させることで、生地作り初期のグルテン骨格の構築をより効率的に進める製法。ミキシングの時間を短縮することができる。

 オーバーナイト法 / 低温長時間発酵法

低温長時間発酵、冷蔵長時間発酵とも。生地を低温で発酵熟成させる製パン法。パン生地を低温、もしくは冷蔵庫に入れることでイーストの活動がゆるやかになり、ゆっくりと発酵する。発酵熟成の期間はある程度の長さを確保しないと期待するほどの効果は見込めない。

仕込みの時間によってはひと晩寝かせることもできるので、オーバーナイト発酵と呼ばれる。もちろんひと晩、以上寝かせる場合もある。