
YouTube 「ミツトパン チャンネル」
はちみつのこと。パンのこと。
レシピ動画の発信をしています
ぜひ遊びにきてね
自家培養酵母って、何?
自家培養酵母ってこんなもの
自家培養酵母とは、自然界に生息している微生物(酵母や細菌)をキャッチして培養し、製パンなどの発酵に利用するものです。自家製酵母とも呼ばれます。

自家培養酵母であっても主流となる酵母はサッカロマイセスセレビシエに分類されるものがほとんどなので、市販の酵母(イースト)とさほど変わりません。
ただ、自家培養酵母の場合は酵母と共存している細菌類が豊かであったり、酵母そのものが培養をくり返されることで種内変異などにより少し性質が変わっていたりするようで、その分、作り手や環境による個性が強く表現され、より個性的で複雑な風味をパンに添加することができます。
自家培養酵母を「酵母」と呼ぶことを嫌う傾向もあります。自然の中の野生酵母を培養しただけでは安定性が低く、工場などで純粋培養されたイーストと比べたときに同じ「酵母」という言葉を当てはめるのがはばかられる、というような考え方からです。
その場合は「種」と呼びます。つまりレーズン酵母ではなくレーズン種と呼ぶということです。
うーん……逆にわかりにくいですよね。
個人的には自家培養酵母の安定性は結構高いなと感じますし、種という言葉にもさまざまな意味合いがあってよりわかりにくく感じるような気がするので、アトリエミツトパンでは自家培養酵母は酵母と呼ばせていただきますね。
自家培養酵母の種類
実はたくさんある、自家培養酵母
自家培養酵母にはたくさんの種類があります。
- フルーツ酵母
- ヨーグルト酵母
- 酒種
- サワー種
- ホップス種
- その他いろいろ
フルーツ酵母はフレッシュフルーツの酵母とドライフルーツの酵母に分けられますし、ヨーグルト酵母は粉なしの酵母と粉ありの酵母に分けられます。

酒種、サワー種は細かく分類すれば際限なく別れていきそうなくらい多種多様な起こし方をされています。
このうち、ミツトパンで管理しているものは……
・レーズン酵母(フルーツ酵母・ドライ)
・季節の果物の酵母(いちごや梅、桃、りんご、レモン、はちみつレモンなど)
・ヨーグルト酵母(粉なしのヨーグルト酵母)
・酒種(掛け継ぎ式)×2←古いものと新しいもの
・ルヴァン種
・ライサワー種
・サワードウスターター
・リエビトマードレ(冬のみ)
……です。
フルーツ酵母
フルーツ酵母には二種類あります。ドライフルーツで起こす酵母と旬のフレッシュフルーツで起こす酵母です。

フルーツ酵母の作り方
ドライフルーツの酵母
- ドライフルーツ
- 水
- 糖(加ない場合もある)
ドライフルーツに付着している酵母や乳酸菌を、水の中で、28℃くらいの環境で培養します。
ドライフルーツがすでにたくさんの糖分を持っているので、別で糖分を添加する必要はありません。ただ多くのドライフルーツは固い皮におおわれておりフルーツの中の糖が水に溶け出すまでに時間がかかるので、砂糖などを少し補ってあげるのも良いでしょう。
フレッシュフルーツの酵母
- 旬のフレッシュフルーツ
- 水
- 糖(加ない場合もある)
あまり変わりませんね! 基本的にはフレッシュフルーツは糖が少ないので添加してあげると良いと思います。
作り方は材料を合わせて、28℃で数日寝かせるだけです。
酵母をメインに起こすので少し高めの温度帯での保存が最適です。アトリエミツトパンでは普段から扱い慣れている28℃で保存しています。
できれば6時間ごとに、少なくとも12時間ごとに撹拌して新鮮な酸素を供給します。
フルーツの種類にもよりますが、酵母が育ってくるとフルーツが水に浮かんで色が抜けてきます。瓶の中が盛大に泡立ちあふれそうなほどシュワシュワしてきます。そのうちに泡立ちが少し落ち着いてきて、フルーツの周りに細かな気泡が現れます。甘味は薄くなり、代わりに酸味とアルコールの風味がのってきます。液体の底に濁ったオリがたまり、オリの隙間からも細かな気泡が上がるようになってくると、酵母として使用できます。
フルーツ酵母の使い方
基本的には起こしたての酵母液以外は元種か中種に変換してから使用することをお勧めします。
起こしたての酵母液をストレートで使用する場合は、普段はベイカーズ%で15-30%くらい添加して使用しています。酵母液の香り(つまりフルーツの香り)が感じられるパンになります(うっすらですけれど)。
発酵活性に不安が残る場合は、必要に応じて市販の酵母を添加して併用します。
こちらのページを参考になさってください。
他にもたいへん参考になるYouTubeのURLを載せておきますね。
アルーチパン教室 “自家製酵母の作り方1”, https://www.youtube.com/watch?v=hK_SG5Z13ag
ヨーグルト酵母
ヨーグルトの酵母には二種類あります。粉を加えずに起こす水溶液状の酵母と粉を加えて起こす水種生地状の酵母です。

ヨーグルト酵母の作り方
粉を加えないヨーグルト酵母
- ヨーグルト
- 水
- 糖
粉を加えるヨーグルト酵母
- ヨーグルト
- 水
- 糖
- 粉
あまり変わりませんね!
作り方は材料を合わせて、28℃で数日寝かせるだけです。
ヨーグルトの中の乳酸菌に助けてもらいながら、空気中の酵母や乳酸菌、小麦粉に付着している酵母や乳酸菌をキャッチして育てます。できれば6時間ごとに、少なくとも12時間ごとに撹拌して新鮮な酸素を供給します。
完成の見極めと使い方は粉を加えないヨーグルト酵母と粉を加えるヨーグルト酵母で少し違ってきます。
酒種
酒種は日本酒を作る工程からヒントを得て作られた日本独自の酵母です。いくつかの種類やアレンジされた酵母があります。

酒種の種類
- 掛け継ぎ式の酒種
- ごはんと麹の酵母
- 酒粕酵母
- 甘酒酵母, 米サワー酵母
掛け継ぎ式の酒種
- 生米
- 冷ましたごはん
- 米麹
- 水
詳しくはこちらをご覧ください。
ごはんと麹の酵母
- 冷ましたごはん
- 米麹
- 水
ごはんと麹の酵母は材料を合わせるのは一度だけ。はじめから糖がふんだんにある中で酵母を育てていきます。種が起きるのも早い印象。
ごはんと麹の酵母は専門外なので、たいへん参考になるサイトを載せておきますね。
こむぎプラス, “酒種(ご飯と麹の酵母)の作り方”, https://komugiplus.com/koubo-gohan-kouji/
酒粕酵母
- 酒粕
- 水
- 糖(ごはんの場合もあるらしい)
酒粕から起こすのでスタートから清酒づくりのための酵母が含まれます。こちらに場合によっては微生物の栄養源となるごはんや糖を加えて水の中で培養します。
甘酒酵母 / 米サワー酵母
- 甘酒
- 水
- ヨーグルトや日本酒(米サワー酵母はヨーグルトや日本酒をスターターとして加えることも)
甘酒酵母は甘酒をそのまま、あるいは水で少し薄めて酵母を培養していきます。必ず熱処理されていない甘酒を使用する必要があります。
甘酒にヨーグルトを添加してpHを手早く下げて、その中で酵母を育てるのが米サワー酵母。他にも日本酒を加えて清酒酵母を優先的に育てる場合もあります。雑菌にやられにくく酵母が起きやすいです。
……というようにいろいろあります。
いずれも酒種にくくられますが、厳密には違うものです。共通するのは、酒種は発泡力が強くパンはよく膨らみますが、タンパク質分解酵素を多量に含むので温度管理に注意する必要があるということです。
わたしの専門は掛け継ぎ式の酒種。こちらで詳しく解説、深掘りしています。ぜひ一緒に酒種、起こしてみましょう!
サワー種
サワー種は、自然由来の酵母や乳酸菌(ときによっては酢酸菌も)を粉と水で培養した発酵種全般のことです。

「サワー種」という単語は捉え方の難しい単語です。日本のパン文化はポルトガル語やフランス語、ドイツ語、英語など、いろんな国の言葉が絡み合って進化してきました。
広義には、世界各国のあらゆる発酵種で、自然由来の酵母や乳酸菌(ものによっては酢酸菌も)を培養した発酵種をすべてひっくるめて「サワー種」と呼びます。酒種でさえ、海外では「Sakadane an ancient sourdough(酒種-古代のサワードウ)」と呼ばれたりします。
より限定的に使用する場合は、ライ麦から起こしてライ麦だけで継いだアンシュテルグートをライサワー種と呼び、種継ぎに茶色い粉を使わずに白い粉だけで継いだフランスの発酵種をルヴァンと呼び、水種状であるにもかかわらず市販酵母を併用せずにそれ単体で発酵をとってパンを焼くことができるように酵母優勢に整えられたスターターをサワードウスターターと呼び、TA値を下げてシュガーバスや圧力負荷をかけて10日以上スクリーニングを繰り返して鍛えた発酵種をリエビトマードレと呼びます。
でもそれらすべてひっくるめて、フランスでは発酵種すべてがルヴァン、ドイツで起こせばライサワー、アメリカで起こせばサワードウ、北欧で起こせばスエダイ、ぜんぶ少しずつ背景が違ってあてがう言語が違うだけで統合的には「サワー種」なんだよ、と解説している書籍も山のようにあります。
サワー種という言葉はそれぞれが干渉し合いながら、曖昧に定義されているという印象です。ごちゃごちゃに使用されているので、前後の文脈で読み解く必要があります。難しいですね。
このようにいろいろあるのです。曖昧ながらも、わたしなりに簡単にまとめておきますね。
サワー種の種類
- ルヴァン種
- ライサワー種 / アンシュテルグート
- リエビト・マードレ
- サワードウスターター
- サンフランシスコサワー種 / ホワイトサワー種
ライサワー種
- ライ麦粉
- 水
- (ヨーグルトを加えることも)
ライ麦と水を合わせて発酵させ、その種の一部をとり数回スクリーニングして乳酸菌と酵母を育てます。
アンシュテルグートと言われるものがこのライサワーの初種です。こちらを1段階法やら3段階法で整えて最終的にザワータイクとして本生地(ハオプトタイク)に使用していきます。
でもドイツパンの書籍などをみても、最近は3段階法を使っているパンはあまりない印象。みんな1段階から2段階でパンに使っている感じがします。
リエビトマードレ
- 発酵種
- 粉
- 水
リエビトマードレはスターターとなる酵母は指定がないのかな。発酵種の一部をとり、「粉:水=2:1以下」くらいのバランスでスクリーニングを繰り返して乳酸菌と酵母を育てます。
厳密にはイタリアの商工会で定められた規定があり、8-10日(サイトによっては20日ほど)1日に3回のスクリーニング、水漬け(水漬けは毎回ではない)、シュガーバス、加圧発酵の工程を重ねて種を整えていくものです。TA 135-150くらいです。
この1日3回のスクリーニングの2回目ないし3回目の種を使ってパネットーネやパンドーロを仕込みます。
書いていても、非常に説明しにくく、伝わりにくいだろうなあ、と感じています。……いつか動画にしたい。
手間がかかる分リエビトマードレで焼くパネットーネはそれ以外の種で焼くものとはまったく違ったものになります。素晴らしく美しいですし、圧倒的においしいです。
こちらの種を模して作られた酵母が日本で「パネトーネ種」と呼ばれているものです。イタリアのコモ粉周辺で見つかった特別な菌を含み、およそ400年の歴史がある種だそうです。この種はラクトバチルスコモエンシスという特殊な乳酸菌をはじめ微生物のバランスが独特なので、生地に鮮やかで華やかな酸味と香りがのるのが特徴です。
私はこの生種は扱ったことがないので詳しく解説することはできません。ただ、おそらくリエビトマードレで作ったパネトーネとはまた違うものに仕上がるような気がしています。
リエビトマードレで作ったパネトーネは今まで日本で食べたどのパネトーネとも似ていないので、結局再現性は低いのではないかなあと思います。
私たちがもっとも手に入れやすい「パネトーネマザー酵母」は酵母自体はイーストなのでパネトーネ種とは違うものです。パネトーネ種に似た風味が得られるようです。
こちらは何度か使用しましたが、リエビトマードレとはまったく異なる香りに仕上がりました。残念です。
サワードウスターター
- 小麦粉かライ麦粉
- 水
粉と水を合わせて発酵させ、その種の一部をとり1日に1-3回スクリーニングして数日かけて乳酸菌と酵母を育てます。
このスクリーニングの配合を、1:2:2から1:5:5くらいでコントロールして、最終的に酵母優勢に整えます。
本生地には、ポーリッシュ種として使用するのが一般的。TA200。
ここから派生して、糖を加えてTA値を150くらいに下げたものをスイートスティフスターターと呼んだりします。ココアで育てるものもあるみたい。サワードウベーカーさんたちの本気の粉遊びですね。毎回、すごいなあと感心してしまいます。
ルヴァンリキッドを味見するとき、みなさん口を揃えて「ヨーグルトのような酸味」と表現します。ルヴァンリキッドは酸っぱいのです。生地がある程度、溶けるまで、しっかり培養して香味を蓄積させるので、生地はとろとろで腰がない状態。だから市販酵母との併用が基本。
一方でサワードウスターターは酸っぱそうな名前のくせに、実際は穀物の甘味があって酸味はほんのり後からきます。はじめに感じるのはまったり舌に広がる牧草っぽい香りと甘味です。これは酵母の活性が落ちないように早めに培養を切り上げることを繰り返すため。餌切れした瞬間に餌やり……ということを繰り返すので、香味の蓄積や弱いのです。
ただ、サワードウスターターは市販酵母を併用しないので、パン生地に配合してからの発酵が長いです。ここで酸の蓄積が行われ、パン生地にサワードウブレッドらしい酸味がのるんですよね。ほんのりですけれども。
ルヴァンリキッドとサワードウスターター、両方お持ちなら同時に培養が終わるように調整して食べ比べてみて。サワードウスターターの甘さを感じられると思います。
サンフランシスコサワードウスターター
- 小麦粉
- 水
- ジャガイモの煮汁
その土地の固有種である乳酸菌をジャガイモの煮汁で培養・発酵させて作るらしいです。これをサワードウスターターとして紹介している書籍もあるので、わたしも詳しくはわからないです。米Amazonで種菌が買えます。とにかく酸っぱい種のようですね。
……というようにいろいろありますね!
いずれそれぞれについて詳しい起こし方や解説を載せたいです。
そのほかの酵母
野生の酵母はあらゆるものに付着していますし空気中にも漂っているものなので、どんなものでも酵母を起こすことができます。基本的には、「食物(草花でも起きるみたい)」「水」「糖」を合わせて28℃で培養します。
以下にわたしが経験したことがある酵母をご紹介します。
ビール酵母
非加熱のビールを使用して培養する酵母です。フルーティな素晴らしい香りがします。わたしはいつもよなよなエールで起こします。
パン生地にして焼いてしまうと、印象ががらりと変わり、かすれたような穀物っぽい香り(麦の香り?ホップの香り?なんなのだろうあのへんな匂いは……??)になります。
ちょっと面白いので、興味のある方は起こしてみてください。もっとも良い香りの酵母(パンにする前だけ)だと思います。
玄米酵母
玄米からは、発泡力が強くてパンの香りを邪魔しないとても癖の少ない酵母を育てることができます。酵母そのものの香りは特別好ましい香りではないのですが(というか私は苦手な香りがします、すごく変な香り)、パンにするとさっぱりと香りが消えて仕上がるのでなかなか重宝していました。
ただ、酵母自体があまりいい香りではないのでお世話をしても特別癒されることもなく(むしろ苦痛)、日常的に使用する酵母のラインナップからは外れています。
100% PURE 国産のはちみつ屋さん
はちみつ屋さん「アトリエ ミツトパン」
自慢のはちみつを売っています
ぜひ遊びにきてね
ノート
✤ 天然酵母ってなに?
実を言うと酵母に天然も人工もありません。酵母はすべて天然のものです。区別があるなら天然か人工かではなく、自家培養か工場などの施設培養かの違いです。
唯一、製品の名称として天然という言葉を使ってしまっている製品がいくつかあるので、そちらを指して天然酵母と表現するのは間違いではありません。しかし本来はこのような紛らわしい製品名は避けるべきですよね。
ビタミンCなどを添加していないという意味では確かに天然のような印象も受けますが、ライサワー種にヨーグルトを添加してpHを下げたからといって「人工的な発酵種だね」とは言わないような気がします。
今では天然酵母という呼び名が一人歩きして、どこかに人工酵母が存在するかのような扱いになっています。でもそんなものはないので、わたしたちはできるだけ天然酵母という言葉を避けるべきだと思います。自家培養酵母と言いましょう。

✤ 市販のイーストが極端に嫌われるのはなぜ?
市販のイーストは天然の酵母で、自家培養酵母と変わらないサッカロマイセスセレビシエです。市販のイーストはこのサッカロマイセスセレビシエを工場で培養したもの、原材料欄に「ビタミンC」や「乳化剤」と記載のあるものは、こちらを加えて培養しましたよ、ということです。添加物ではありますが、それほど忌避する必要はないかと思います。
一方で「イーストフード」というものは食品添加物(16種類あります)で、添加物への意識の高い方は避ける傾向にあるようです。ただイーストとイーストフードは別のものなので、どうか混同されないようにお願いします。
私たちが家庭で育てる酵母は、イーストの他にもいくつかの微生物を有する複合酵母なので、より複雑な香味があります。よりおいしいと感じる方が多いのは事実ですが、市販のイーストを毛嫌いするのはあまりおすすめしません。なぜなら、自家培養酵母と市販のイーストの合わせ技はお互いのいいところをより強調して、おいしい生地作りができるからです。市販のイーストとも上手につきあいながら、自家製酵母のパンを楽しんでいただけたらと思います。
Q&A
QQQ.
晴がお答えします
QQQ.
晴がお答えします















