#酒種
#sakadane
#麹
今回ここでご紹介するのは日本の伝統的な酒造り、生酛造りから生まれた酒種です。自然由来の酵母や乳酸菌をキャッチして数日かけて微生物叢を整えて発酵活性をあげていきます。長時間の乳酸発酵から種起こしを行うごく基本的な酒種のレシピです。
育成の流れは、まず長時間の乳酸発酵でそやし水という酒の素になる水に似た状態を作ります。その中で乳酸菌が働きpHが下がって雑菌が働けなくなったところで効率的に酵母を培養していくというものです。乳酸菌と酵母の働きで酸とアルコールが一定量溜まると乳酸菌が徐々に減っていき、酵母優勢の微生物叢が出来上がります。
酒種には次のようなものも含まれますが、それぞれ別の名称があるのでそちらを使用すると混乱しにくいと思います。
・ごはんと麹の酵母
・酒粕酵母
・甘酒酵母
・米サワー(甘酒とヨーグルト)酵母……など
伝統的な酒種はこれらとは微妙に違うもので、4回の種継ぎを行って育てていくものです。
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材料
1番種
生米 | 50g |
炊いたごはん | 10g |
米麹(乾燥) | 40g |
水 | 100g |
2番種
前回の種 | 30g |
炊いたごはん | 100g |
米麹(乾燥) | 30g |
水 | 80g |
3番種
前回の種 | 30g |
炊いたごはん | 100g |
米麹(乾燥) | 20g |
水 | 50g |
4番種
生米 | 20g |
炊いたごはん | 100g |
米麹(乾燥) | 20g |
水 | 60g |
作り方
1
生米、ごはん、米麹、水を合わせてよく混ぜる
28℃で48時間、保管する
・6-12時間ごとにかきまぜる
・この2日間の工程は主に種の乳酸発酵を促すもの
この2日間の工程は種の乳酸発酵を促すものと考えると、実はもっと安定性の高い方法があるのでは?……なんて考えている最近です。
乳酸発酵をより効率的に行うために、そやし水作りの工程だけは容器や時間や温度を変えたり……2番種以降の工程と分けて考えると幅が広がりそうです。
さらに酒種って起こしたてと何回か継いだあととで味が変わるので……2-3回を区切りとして起こし直すかどうか……迷うとこですよね。
酵母って育てるのが楽しいので、長く継いでいきたいっていう気持ちがどこかにあるのです。そうなると種継ぎ自体を見直すこともできそうです。
またいくつか試して良い方法をお伝えしますね!
< 24時間後 >
・蓋をあけるとかすかにプシュッという音がする
・米粒の周りにちらほら気泡が見える
・混ぜるとはじめだけぷつぷつという泡の弾ける音がする
・香りは麹特有の甘酒そのもののような香り
< 48時間後 >
・蓋を開けるとプシュッとガスの抜ける音がする
・気泡は増えるが、少し細かくなってくる
・種はとろとろと水っぽくなり、甘酒が少しすすんだときのような香りがする
・風味は甘酸っぱく、アルコールの香りはなく、まだ甘味がしっかりと残っていることが感じられる
・生米や麹の粒は水を吸っているが、まだ芯の方がかためで、このつぶつぶは種継ぎをくりかえすうちに気にならなくなるのでこのまま前種として使用していく
2
前回の種、ごはん、米麹、水を合わせてよく混ぜる
28℃で24時間、保管する
・6-12時間ごとにかきまぜる
< 24時間後 >
・かなりガスが出るようになる
・種の表層にぶくぶくとした気泡が見られ、その気泡にタンパク質の塊が張り付いているのが目視できる
・かき混ぜなくても絶えずガスが出る
・混ぜるとさらにたくさんの気泡がでる
・香りは完全に酒種の香りになり、アルコールの香りも乗ってくる
・酸味も甘味もあり、微炭酸を感じる
・米サワーのような風味
3
前回の種、ごはん、米麹、水を合わせてよく混ぜる
28℃で18時間〜、保管する
・6-12時間ごとにかきまぜる
< 18時間後 >
・ガスがたくさん出る
・種の表層は白く覆われている
・アルコールの香りがより鮮明になってくる
・甘味は少なくなり、酸味がしっかりとのってくる
・微炭酸がある
・アルコールの香りとはっきりとした酸味が酒種が完成に近づいているポイント
4
前回の種、ごはん、米麹、水を合わせてよく混ぜる
28℃で12時間〜、保管する
・6-12時間ごとにかきまぜる
< 12時間後 >
・冷蔵庫に入れて翌日以降に使用する
5
完成!
表層のタンパク質の膜とアルコールの香り、はっきりとした酸味が完成を確認するポイントです。甘味はほとんどなくなります。
このあとはできれば5日、少なくとも1週間ごとにリフレッシュして育てます。
種継ぎ / リフレッシュ
4番種と同じ工程で継ぐ
ノート
✤ 酒種大好きです!
日本酒を作る工程、生酛造りからヒントを得て作られた日本独自の酒種。4回にわたって種継ぎを行って酵母と乳酸菌、コウジカビ菌のバランスを整えていきます。
酒種は、あんぱんの木村屋さんが考案した発酵種だそうです。日本で「ヨーロッパのようなパンをヨーロッパ独自の発酵種で焼こう」と試みたところうまくいかず、日本独自の種でチャレンジしたのが始まり。
日本人好みの柔らかくもっちりとした食感に焼き上げるために、日本酒作りの工程を参考にして、大変な苦労をされて考案されたものだそうです。当時の職人さんはデリケートな酒種を壺に入れて管理し、夜も肌身離さず過ごしたそうですよ。今ではメソッドが確立され、酒種は家庭でも簡単に起こすことができます。身近な酵母になりましたね。
また酒種にはデンプン分解酵素アミラーゼがたくさん含まれています。これは生地の糖化に役立ちます。酒種を使用した生地は比較的色づきやすく、甘い生地になるのはこのためですね。
✤ 酒種の使い方
酒種は冷蔵庫(4℃以下)で管理することで、完成してから5日たっても酵母の発酵活性は70-80%維持されるそうです。これを聞くと5日間はストレートで使用できそうですが、あくまでも一定の温度下で適切に管理された場合だけなので、発酵力に不安があるようであれば必要に応じて市販酵母を併用してください。
具体的な使い方は、加水の一部を酒種に置き換えて使用します。私は5-20%くらいをおきかえるようにしています。
アトリエミツトパンの酒種は水分量が65%くらい(66.7%)です。粉量100g、加水70%の生地で、「70gの水」を「酒種10%+水」に置き換える場合は、「酒種10g+水63.5g」に置き換えます。酒種10g中、水分が約6.5g。必要な加水は70g-6.5g=63.5gという計算になります。
✤ 酒種の使用上の注意
酒種にはタンパク質分解酵素プロテアーゼが含まれます。パンはこのタンパク質が骨格になって、気泡を閉じ込め、縦に膨らんでふっくらするのです。なのでタンパク質分解酵素が活発に働いて生地の分解が進むと、生地が切れたり溶けたりします。そこまでいかないにしても、生地が横に広がりやすくなり、「ダレる」と表現される状態に陥ることがあります。酒種を使用する場合はこの点に特に注意する必要があります。
対策としては発酵活性が維持された酒種を適切に使用すること、生地の温度管理を徹底すること(28℃〜38℃帯以上に長くおかない)があげられます。
実際に作ってみた体感としては、しっかりと管理された酒種であれば、食パン生地などの最終発酵35℃で1-2時間ほどの管理は特に問題なく行えたので、ご自身の育てた酒種の状態と相談して、生地管理の方法を工夫してみてください。
✤ 酒種でパンを焼く!