日本の伝統的な 自家製酵母 、酒種 を作ります。一緒に作ってみませんか?
・衛生的な環境で行ってください
・衛生的な材料を使用してください
・視覚と嗅覚をしっかり使って発酵と腐敗の違いを見極めてください(酵母液の質感や色の異常、かび、腐敗の匂いがする場合は味見禁止です)
・酵母の育成、使用についてはすべて自己責任でお願いします
家庭での微生物の培養なので危険が伴います。リスクを知ったうえで取り組んでいただきたいです。
それと同時に各ご家庭ごとに環境も変わるので、酵母の様子も変わる可能性があります。わたしの方法は多くのやり方のうちのひとつでしかありません。たったひとつの正解がある道ではないのだということを知っておいていただけると、今後、うまくいかない場合にも少しだけ心やすらかでいられると思います。酵母起こしは試行錯誤が基本です。何度も試していただけたらきっと良い酵母と出会えます。
一方で、正解はないけど王道はあります。わたしの知識の範囲での「酵母起こしの最適解」をお伝えしています。どれも大事なレシピです。かわいがってやってください。
どうぞよろしくお願いいたします。
#酒種
#sakadane
#麹
今回ここでご紹介するのは日本の伝統的な酒造り、生酛造りから生まれた酒種です。自然由来の酵母や乳酸菌をキャッチして数日かけて微生物叢を整えて発酵活性をあげていきます。長時間の乳酸発酵から種起こしを行うごく基本的な酒種のレシピです。
育成の流れは、まず長時間の乳酸発酵でそやし水という酒の素になる水に似た状態を作ります。その中で乳酸菌が働きpHが下がって雑菌が働けなくなったところで効率的に酵母を培養していくというものです。乳酸菌と酵母の働きで酸とアルコールが一定量溜まると乳酸菌が徐々に減っていき、酵母優勢の微生物叢が出来上がります。
酒種には次のようなものも含まれますが、それぞれ別の名称があるのでそちらを使用すると混乱しにくいと思います。
・ごはんと麹の酵母
・酒粕酵母
・甘酒酵母
・米サワー(甘酒とヨーグルト)酵母……など
伝統的な酒種はこれらとは微妙に違うもので、4回の種継ぎを行って育てていくものです。
酒種起こしの詳細についてはQ&Aをご利用ください。
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レシピカード

1.
レシピカードは自由にダウンロードして、個人利用としてお使いいただけます。
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アレルギー、賞味期限などに関しましては、各自で十分にご注意の上、自己判断でご利用ください。
4.
パートナーさん限定で閲覧可能なレシピについては、具体的な材料、分量、特徴的な製法や工夫、動画のURLなどは口外なさらず、パートナーみなさんの権利を犯さない範囲でのご利用をお願いいたします。
配合
1番種
生米 | 50g |
炊いたごはん | 10g |
米麹(乾燥) | 40g |
水 | 100g |
2番種
前回の種 | 30g |
炊いたごはん | 100g |
米麹(乾燥) | 30g |
水 | 80g |
3番種
前回の種 | 30g |
炊いたごはん | 100g |
米麹(乾燥) | 20g |
水 | 50g |
4番種
生米 | 20g |
炊いたごはん | 100g |
米麹(乾燥) | 20g |
水 | 60g |

作り方
1
生米、ごはん、米麹、水を合わせてよく混ぜる
28℃で24-48時間、保管する

・生米は流水で洗う(とがないでね)
・混ぜあげは室温で(28℃付近が目安)
・6-12時間ごとにかきまぜる
・この1番種の工程は主に種の乳酸発酵を促すもの
この2日間の工程は種の乳酸発酵を促すものです。
これまで幾度となく酒種を起こしてきましたが、1番種の乳酸発酵が起こらなかったことは一度もありません。わたしの考察では、ここで失敗することはまずない(というか100%ない)と思うので、特に意識せずに、まずは28℃で48時間の発酵をとってみてください。
清潔な環境下(一般的なご家庭の衛生レベルなら大丈夫◎)であれば混ぜても構いませんし、酸素を遮断する必要もありません。
乳酸菌は通性嫌気性の生物ですが、28℃で加温をつづければ、うんともすんとも言わない間にも順当にpHは下がるので、あまり気にしないでください。
このpHの経過などまとめたものを「酒種をもっと詳しく」というコンテンツで深掘りしています。そちらも合わせてご覧ください。
< 24時間後 >
・蓋をあけるとかすかにプシュッという音がする
・米粒の周りにちらほら気泡が見える
・混ぜるとはじめだけぷつぷつという泡の弾ける音がする
・香りは麹特有の甘酒そのもののような香り(苦手な人は苦手だと思います……ちなみにわたしはこの匂いがとても苦手です)

酒種の進み具合は麹によって大幅に変わります。ゆっくりスタートする麹の場合はこちらの状態になるまでに48時間以上かかることがありますので、気長に待ってみてください。
このように米の間に気泡が入り始めてもまだまだpHはかなり高い状態なので、引きつづき加温してpHが4.0付近に到達するまで様子を見ていきます。
進みがゆっくりな麹の場合は、ガスが出はじめる前にタンパク質の分解が先に起こります。気泡が見えにくくなるので注意してね。
< 48時間後 >
・蓋を開けるとプシュッとガスの抜ける音がする
(わたしのキャニスターはガスが抜けちゃうので分かりにくのですが……←スクリュー瓶の資料をご用意しますね)
・気泡が増える
・中くらいの透明な気泡がぷすぷす出る場合は少し早い
(この状態の動画資料をお見せしますね)
・勢いよくシュワーっとなる頃がタイミング
(この状態の動画資料をお見せしますね)
・種はとろとろと水っぽくなり、甘酒が少しすすんだ米サワーのような香りがする(酒種に近い香りです)
・風味は甘酸っぱく、アルコールの香りはなく、まだ甘味がしっかりと残っていることが感じられる
・生米や麹の粒は水を吸っているが、まだ芯の方がかためで、このつぶつぶは種継ぎをくりかえすうちに気にならなくなるのでこのまま前種として使用していく

このプシュッとしてぶくぶく泡が出る段階が次の工程に進むタイミングで、控えめにプシューっと抜けていくような状態はあと6-12時間足りないくらいです。じっくり様子を見てみてね。動画資料を用意したので時間のあるときにご確認ください。
プシュッと言わない場合は、かなりスロースタートの酒種です。水が濁るばかりでガスが発生しないのでとても不安だと思いますが、この後、劇的に変わるので信じて待ってみてください。
6-12時間ごとに撹拌、引きつづきの28℃加温はマストです。実はこのような種の方が酒種の仕上がりはとても良くなったりするんです。気長にいきましょう〜。
はっきりと発泡する前の状態の香りはとても苦手な香りです。お米が蒸されたような……甘酒がもわっとするような……とても嫌な香りがします。良い香りになるまで1番種で我慢です。この変化もまた楽しんでください。
……そういう訳でスロースタートの酒種はまだまだ28℃で加温してね。プシュッとはっきりとガスが出て、泡が立って、香りが変わるまでしっかり培養しましょう!
2
前回の種、ごはん、米麹、水を合わせてよく混ぜる
28℃で24時間、保管する


・6-12時間ごとにかきまぜる
< 24時間後 >
・かなりガスが出るようになる
・種の表層にぶくぶくとした気泡が見られ、その気泡に分解されたタンパク質の塊が張り付いているのが目視できる
・かき混ぜなくても絶えずガスが出る
・混ぜるとさらにたくさんの気泡がでる
・香りは完全に酒種の香りになり、アルコールの香りもほんのりのってくる
・酸味も甘味もあり、微炭酸を感じる
・米サワーのような風味


ここからはもう何もしなくてもどんどん種が強くなり、進んでいくので、ここから失速することはほぼないです。もう加減する場所がないので、このまま示してあるレシピ通りに、時間通りに工程を進めてください。
1番種の工程をすぎてしまえば、種は完全に酒種の匂いに変わります。この変化が劇的で面白い!です。
ここでは見極めのポイントなどもほとんどなく……とにかく6-12時間ごとにかき混ぜて、28℃で24時間です!
3
前回の種、ごはん、米麹、水を合わせてよく混ぜる
28℃で18時間〜、保管する


・6-12時間ごとにかきまぜる
< 18時間後 >
・ガスがたくさん出る(大きな泡と細かな泡が競り合って溢れてくる感じです)
・種の表層は白くタンパク質が分解された膜に覆われている(泡の出が活発すぎる場合はちょっと確認しにくいかもしれないです)
・はっきりと酒種の香り、アルコールの香りもします
・甘味は少なくなり、酸味がしっかりとのってくる
・微炭酸がある
・アルコールの香りとはっきりとした酸味が酒種が完成に近づいているポイント

うまく進んでいれば、発泡も盛んですし香りも酒種ですし、不安に思うところはないかと思います。
ただ「この3番種か次の4番種で失速するんです……」というご相談がとーっても多いです。これは1番種が若すぎた場合によく起こります。「1番種これでよかったかな?」と思いながら進んだ場合は、よくふりかえってみて下さい。
ここで失速した場合の対処法なども追記のコンテンツでご紹介しますので、みてみてね。
4
前回の種、ごはん、米麹、水を合わせてよく混ぜる
28℃で12時間〜、保管する

・6-12時間ごとにかきまぜる
< 12時間後 >
・ガスがたくさん出る
・ガスの変化が面白い(大きな発泡から培養が進むにつれてじわじわ発泡に変わるので、完成のタイミングでは大きな気泡はあがってきません)
・アルコールの香りがのってとても良い芳香


4番種が6時間、12時間でどう変わるのか。この変化が酵母起こしの成功のポイントとしてとても面白いので、ぜひ観察してみて下さい。
しーっかり、かなり念入りに撹拌してガスをしっかり抜いてから冷蔵庫に入れましょう。
・冷蔵庫に入れて翌日以降に使用する
5
完成!
表層のタンパク質の膜とアルコールの香り、はっきりとした酸味が完成を確認するポイントです。甘味はほとんどなくなります。
このあとはできれば3日、少なくとも1週間ごとにリフレッシュして育てます。
このタイミングで発酵チェックしてみて下さい。1時間で2-2.2倍になります。よく発酵チェックで2-3時間で2倍と言われますが、起こしたての酒種の発酵はかなり早いです。そしてこのタイミングで焼くパンが最高に「旨み」がのってておいしいので、ぜひ楽しんでみてね。バゲットやフォカッチャおすすめです。いつものパンが甘うまになります!
種継ぎ / リフレッシュ
4番種と同じ工程で継ぐ
ノート
✤ 酵母の完成を確認する
自家培養酵母の完成を確認するならポーリッシュ種で確認してみてください。
粉:酒種=1:1 で混ぜあげて28℃で保温します。1.5-2時間で最低2倍になればOK◎です。ただちゃんと上手に起きた酒種は1時間で2倍を超えます。適正に起こせているかチェックするなら、1時間で2倍になるかどうかをチェックポイントにしてみて下さい。
✤ 酒種大好きです!
日本酒を作る工程、生酛造りからヒントを得て作られた日本独自の自家培養酵母である酒種。4回にわたって種継ぎを行って酵母と生米由来の乳酸菌、コウジカビ菌のバランスを整えていきます。
酒種は、あんぱんの木村屋さんが考案した発酵種です。日本で「ヨーロッパのようなパンをヨーロッパ独自の発酵種で焼こう」と試みたところうまくいかず、日本独自の種でチャレンジしたのが始まり。木村屋さんは1875年に初めて明治天皇に酒種桜あんぱんを献上したのだそうです。酒種にはまさに150年ほどの歴史があるというわけです。すごいですよね。
酒種は、日本人好みの柔らかくもっちりとした食感に焼き上げるために日本酒作りの工程を参考にして、大変な苦労をされて考案されたものです。当時の職人さんはデリケートな酒種を壺に入れて管理し、夜も肌身離さず過ごしたそうですよ。
そこから酒種についての試行錯誤や研究が数多く行われてきました。わたしたちがのぞける研究論文やジャーナルは30-40年ほど昔に記されたものが多いでしょうか。この時代(酒種がちゃんとした設備の整った環境で起こすプロのための種だった時代)から環境が大きく変化し、多くのパン職人さんや製パン講師さんが研究されて、ここ10年くらいで家庭で起こしやすいメソッドが確立され、酒種は簡単に安定的に起こすことができるようになりました。身近な酵母になりましたね。
この酒種、味わいの面でもおいしいメリットがあります。酒種にはデンプン分解酵素アミラーゼがたくさん含まれています。これは生地の糖化に役立ちます。酒種を使用した生地は比較的色づきやすく、甘い生地になるのはこのためですね。
✤ 酒種の使い方
酒種は冷蔵庫(4℃以下)で管理することで、完成してから5日たっても酵母の発酵活性は70-80%維持されるそうです。これを聞くと5日間はストレートで使用できそうですが、あくまでも一定の温度下で適切に管理された場合だけなので、発酵力に不安があるようであれば必要に応じて市販酵母を併用してください。
具体的な使い方は、加水の一部を酒種に置き換えて使用します。私は5-18%くらいをおきかえるようにしています。
アトリエミツトパンの酒種は水分量が65%くらい(66.7%)です。粉量100g、加水70%の生地で、「70gの水」を「酒種10%+水」に置き換える場合は、「酒種10g+水63.5g」に置き換えます。酒種10g中、水分が約6.5g。必要な加水は70g-6.5g=63.5gという計算になります。
✤ 酒種の使用上の注意
酒種にはタンパク質分解酵素プロテアーゼが含まれます。パンはこのタンパク質が骨格になって、気泡を閉じ込め、縦に膨らんでふっくらするのです。なのでタンパク質分解酵素が活発に働いて生地の分解が進むと、生地が切れたり溶けたりします。そこまでいかないにしても、生地が横に広がりやすくなり、「ダレる」と表現される状態に陥ることがあります。酒種を使用する場合はこの点に特に注意する必要があります。
対策としては発酵活性が維持された酒種を適切に使用すること、生地の温度管理を徹底すること(28℃〜38℃帯以上に長くおかない)があげられます。
実際に作ってみた体感としては、しっかりと管理された酒種であれば、食パン生地などの最終発酵35℃で1-2時間ほどの管理は特に問題なく行えたので、ご自身の育てた酒種の状態と相談して、生地管理の方法を工夫してみてください。
✤ 酒種でパンを焼く!
Q&A
Q. 米麹を持っていません、材料を省略してもいいですか?
Q. なぜ生米を使うのですか?他の酒種には使われていません。
Q. 冷蔵庫でしばらく放置していた酒種の元気がありません。どうしたらいいですか?
Q. 酒種を作ってみたいと思っているのですが、温度管理はどの様にされていますか?常温では難しいでしょうか?
Q. 毎週の種継ぎのあとは必ず12時間待ちますか?
Q. 黒米などでもできますか?
Q. ガーゼで漉さない方法を初めてみました
Q. 1番種ですが、乳酸発酵を促すなら酸素はいらないと教わりましたがどうですか?
Q. 継ぎ続けることができないということですが、何回くらいなら継げますか?
Q. 2番種に移行する際に1番種の一部を使用していると思いますが、米粒も入れますか?また残りの1番種はどうしますか?捨てますか?
Q. 1番種に米麹がすでに含まれているので2番種以降は添加を省くことができますか?
Q. お米のかたさはどのくらいですか?
Q. ぬかや胚芽を取り除いた米では酒種は起きないのではないかと思います。そのあたりを確認してもらえますか?
Q. 捨て種がたくさん出るのですね……?
Q. 実際にパンに使用するときの使用方法を教えてください。
Q. 使用する前に室温に戻しますか?
Q. 25-28℃ならなんでもいいとYouTubeの解答欄にありますが……?
Q. 酒種は継ぎ続けると香りが変わるというのはどういうことですか?
Q. 酒種を起こすのにおすすめの米や水はありますか?
酒種起こしをもっと詳しく
それほんとうは失敗じゃないかも? 見極めのポイントを確認してもう一度やってみよう!
ご質問はパスワード入力後のページからどうぞ。