ふわっふわのパンにグラスをたっぷりかけて、ベリーのジャムと生クリームをはさんだスイートブレッドをご紹介します。英語名は「Iced Finger / Swiss Buns」。「Swiss Buns」なのにイギリスのパン?!
アイシングブレッド / 11個分
焼成温度はお持ちのオーブンに合わせて調整してください。本来のアイシングブレッドはちぎりコッペパンのように成形し、ベリー系のジャムと生クリームをサンドします。今回はトリプルノット成形のソフトパンに「赤ワインとベリーのジャム」を合わせました。ぜひお楽しみください。
木琴堂チャンネルでは長野県【安曇野養蜂苑】のアカシアはちみつを使用しています。
強力粉→キタノカオリ
酵母→ルヴァンリキッド+サフ赤
バター→カルピス発酵バター
■アイシングブレッドの作り方
フロー
■赤ワインとベリーのジャムを作る
■生地を作る
オートリーズ
30分
こねあげ温度
25-27℃
発酵
28-30℃/おおよそ60分
折りたたみ1回
発酵
28-30℃/発酵膨倍率3倍
冷蔵発酵をとる場合は、復温後の生地が3倍程度になるように調整してください。
分割
60g/5分割
最終発酵
28-30℃/膨倍率おおよそ2倍
焼成
予熱 250℃
焼成 210℃で10-12分
■グラスを作る
■生クリームを泡立てる
■組み立てる
フローは目安です。生地の状態を見極めながら、各工程を調整してください。焼成温度はお持ちのオーブンに合わせて調整してください。
下準備
赤ワインとベリーのジャムを作ります
冷凍ベリー、グラニュー糖、赤ワイン、レモン果汁を合わせて軽く混ぜ、中火にかけます。あくをとりながら煮ます。ほどよく水分が飛んだら冷まします。
かたさはお好みで調整してください。今回は20-30分間、加熱しました。
グラスを作ります
粉糖、牛乳を合わせてよく混ぜ、レモン果汁を加えてさらに混ぜます。
グラスは、アイシングブレッドの組み立ての前に用意します。
生クリームを泡立てます
生クリーム、グラニュー糖を合わせて泡立て、7-8分立てにします。
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ボウルに卵黄、牛乳、水、はちみつ、ルヴァンリキッド、インスタントドライイーストを加えてイースト液を作ります。
インスタントドライイーストはルサッフル社のサフを使用しています。水温15℃以下の場合、うまく機能しないことがあるようなので、水温は15℃以上で調整します。こねあげ温度が上がりすぎる場合は、オートリーズの工程で生地温度を下げる工夫をします。
強力粉にイースト液を加えて、粉っぽさがなくなるまで混ぜます。
オートリーズをとります。
オートリーズは粉の水和を促し、グルテンを効率良く繋げたり、酵素を働かせる効果があります。休ませている間に生地が繋がり、綺麗に伸びるようになります。難しいことは抜きにしても、単純に捏ねの負担が軽減されますので、時間がある方は入れてみてください。
オートリーズの基本材料は「粉」「水分」「(添加する場合は)酵素」です。工程が増えることが気にならない場合は、ルヴァンリキッドとインスタントドライイーストも後入れしてみてください。こねあがりが近づいたときに、生地の表情が少し違ってきます。些細な差ですが、酵母を後入れする方が生地が滑らかになるのが早いです。
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生地をこね台に出して塩を加え❶、生地の表面がなめらかになるまで捏ねます。
生地をこね台にすりつけながら、生地が縦に伸びるうちは縦に伸ばすように心がけて捏ねます❷。はじめはベタつく生地です。手のひらとこね台をカードでその都度、綺麗にしながら捏ねます。摩擦と引き伸ばしの効果でグルテンがバランスよく鍛えられます。
やがて生地が伸びなくなってきたら、折りたたんで押しこむことをくり返しながら捏ねます❸。ここまで生地が鍛えられたら、生地を無理に伸ばさないように気をつけます。形成されたグルテンは伸ばしすぎてちぎると、繋がりが切れてしまうからです。伸ばしすぎず、生地の表層を切らないように気をつけます。
生地はだんだんとつるんとしてきて、なめらかになります❹。
こね具合が気になる場合は、グルテンチェックをします。生地を5分ほど休ませてから、端を切り落として、薄く伸ばしてみます。
薄く伸びた生地の薄さと、なめらかさ、切れるときの切れ方などを確認します。今回のパンは、吸水が少ないので限界はありますが、ある程度は綺麗な薄膜に伸ばしたいです。手の指が透けるくらい薄く伸び、切れるときにつーっと切れるようなハリがあれば大丈夫です。
グルテンチェックは、本来、油脂入れ後に行いますが、手ごねの場合は、油脂入れの前に確認してみると、失敗が少ないです。油脂の追加が早すぎるといつまでも生地が繋がらなくなることがあります。機械捏ねの場合はこのひとつ手前で捏ねを切りあげます。ここで捏ねすぎると、次の工程で油脂が生地に入っていきにくくなり、結果、捏ねすぎになってしまうからです。手ごねでは、油脂を入れてから生地を仕上げようとすると、かなりの体力を要します。油脂入れ前に生地を仕上げておくと、この後が楽です。
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発酵バターを加えて❶、捏ねます。
生地に断面を作り、油脂を揉みこんでいきます❷❸。揉んでいくうちに、少しずつ油脂いが吸収されていきます。ある程度、吸収されたら、揉んで、伸ばす❹、これをくり返すうちに自然とグルテンの隙間に油脂が入っていきます。
やがて生地が温かくなって、手のひらにしっとりと吸いつくようななめらかさになります。
油脂は指で押して形が変わるくらいの冷たさにします。かちこちでは混ぜにくいですが、やわらかくしすぎないことも大切です。手のひらの温度でとけてしまうようでは、固形油脂の意味をなさなくなってしまいます。特に今回のように10%以上の油脂が入る場合は、手ごねの場合は、手のひらの温度が伝わってしまいやすいので、なるべく直接には触れずにこねたいですね。
油脂入れ前に生地をこねあげているので、ここでは油脂が馴染めば、なめらかな生地になっているはずです。再び、グルテンチェックをしてみるのもいいと思います。先程のグルテンよりももっと伸びやかに生地が伸びますよ。
こねあげ温度
25-27℃
4
生地が一度ゆるんで、少し広がって見えるくらいまで発酵させます。
温度と目安
28-30℃ / 60分
発酵後の生地です。
5
軽くガスを抜きます。
生地を縦横、それぞれ三つ折りにします。
6
生地が3倍になるまで発酵させます。
温度
28-30℃
発酵後の生地です。
7
生地をこね台に出して、全体を優しく押してガスを抜きます❶。ひとつ60gに分割し❷、ベンチタイムをはさみながら予備成形をします❸❹。
トリプルノット成形をします❶❷❸❹。
詳細は動画でご確認ください。
8
生地がおおよそ2倍になるまで発酵させます。
発酵後の生地です。
9
仕上げに艶出しをします。
10
焼成します。
予熱 250℃
焼成 210℃で10-12分
粗熱が取れて、ほんのり温かいくらいのパンの様子です。
粗熱がとれたら、まだほんのり温かいうちに保存袋に入れて保存します。
翌日のパンの様子です。
11
パン生地にグラスをかけて、乾かします。
12
アイシングブレッドを組み立てます。パンに切りこみを入れて、ベリーのジャムとホイップクリームをはさみます。
13
完成!
■ポイント
アイシングブレッドとは?
アイシングブレッドと呼んでいますが、今回はイギリスの「Iced Finger」「Iced bun」「Swiss Bun」を参考にレシピを組み立てています。グラスブレッドとも訳せそう……でもフランス語と英語が混ざる感じになってしまうので、アイシングブレッドを採用しました。
Iced Finger / Swiss Bun とは?
英語では「Iced bun」「Iced finger」「swiss bun」。ブリオッシュ生地に近いリッチな菓子パン生地にアイシングをかけて、ベリー系のジャムと生クリームをはさんで仕上げるイギリスのパンです。イギリスでとても人気がある(らしいです)。シンプルな白いアイシングの他には、ピンクのアイシングがかかったものをよく見かけます。レモン風味のものもあるみたい。
「swiss bun」というと、こちらのアイシングブレッドの他に、丸パンに十字の切り込みを入れたパンやブリオッシュ生地のパンなどスイスのパン全般を指す印象があります。これらが合わさって、スペイン、マドリッドのswiss cafeから転じて広がり、アイシング部分をアイシングシュガーではなくグラニュー糖に置き換えて、シュガーバタートップのようなデコレーションをしたブリオッシュの丸パンを限定的に「swiss bun」とする場合もある(らしいです)。
「swiss bun」をスペイン語で検索すると、あがってくるのはシュガーバタートップのようなパンがほとんどですが、フランス語で検索するとチョコチップ入りのブリオッシュがあがってきます。ドイツ語で検索するともっと素朴なパンがあがってきますし、イタリア語で検索するとツォップがあがってきます。多種多様です笑。スイスの公用語を考慮すると、「Iced Finger」や「シュガートップ」を「Swiss Bun」と言っているのは外国人だけ、ということなのでしょうか。面白いですね笑笑。
これらは私が英文を理解できる範囲で調べたものなので、そんな説もあるんだ〜、という感じで受け止めていただけると幸いです。
■酵母と製法
ルヴァンリキッド
ストレート法
ストレート法とは?
直捏ね法とも。材料(フィリングなどは除く)を一度にミキシングし、パン作りの工程を分割することなく、発酵、成形、二次発酵、焼成までを滞りなくひとつの流れで行う製パン法。家庭製パンでもよく用いられている。風味がよく、発酵時間も短く済み、材料の個性が出やすいという特徴がある反面、生地の老化が早くまたボリュームが出づらいという短所もある。
オールイン製法と区別する点は、油脂入れのタイミング。ストレート法はミキシングの工程は分割しないが、油脂はミキシングの最後に加えることが多い。