日本の伝統的な酒造り、生酛造りから生まれた自家培養酵母。自然由来の酵母や乳酸菌をキャッチして数日かけて微生物叢を整えて発酵活性をあげていきパン焼きに利用するもの。
育成の流れは、まず長時間の乳酸発酵でそやし水(酛)という微生物の培地を作る。その中で乳酸菌が働きpHが下がって雑菌が働けなくなったところで酵母を培養していく。乳酸菌と酵母の働きで酸とアルコールが一定量溜まると乳酸菌が徐々に減っていき、酵母優勢の微生物叢が出来上がる。
酒種には次のようなものも含まれるが、それぞれ別の名称があるのでそちらを使用すると混乱しにくい。
・ごはんと麹の酵母
・酒粕酵母
・甘酒酵母
・米サワー(甘酒とヨーグルト)酵母……など
伝統的な酒種はこれらとは微妙に違うもので、4回の種継ぎを行って育てていく。詳しくは下記参照のこと。
酒種は、もともとはあんぱんの木村屋さんが考案した発酵種。日本で「ヨーロッパのようなパンをヨーロッパ独自の発酵種で焼こう」と試みたところうまくいかず、日本独自の種でチャレンジしたのが始まりだという。
日本人好みの柔らかくもっちりとした食感に焼き上げるために、日本酒作りの工程を参考にして、大変な苦労をされて考案されたもので、当時の職人はデリケートな酒種を壺に入れて管理し、夜も肌身離さず過ごしたのだそう。今ではメソッドが確立され、酒種は家庭でも簡単に起こすことができる。
酒種にはデンプン分解酵素アミラーゼが多く含まれている。これは生地の糖化に役立ち、酒種を使用した生地は比較的色づきやすく甘い生地になるのはこのため。
またタンパク質分解酵素プロテアーゼも多く含まれる。タンパク質分解酵素が活発に働いて生地の分解が進むと、生地が切れたり溶けたりする。酒種を使用する場合はこの点に特に注意する必要がある。
対策としては発酵活性が維持された酒種を適切に使用すること、生地の温度管理を徹底すること(28℃〜38℃帯以上に長くおかない)があげられる。