【かぼちゃのマーブル食パン】

少しのイーストとはちみつで作る【かぼちゃのマーブル食パン】の作り方。

生地の断面が綺麗なマーブル模様になっているので「マーブルパン」と呼ばれたりしますが、生地作りの過程で折り込み作業を行う折り込みパンの一種です。

折り込みパンとは

パン生地(デトランプ)に油脂やフレーバーシートを包んで数回折りたたみ、パン生地と油脂やフレーバーシートの層を作って焼き上げるパンのことです。お馴染みのクロワッサン生地は油脂を折り込んだもの、デニッシュ生地はその生地に甘みが加わったものです。今回のかぼちゃのマーブル食パンはかぼちゃ餡のシートをパン生地で包んで折り込んでいます。

折り込みパンのレシピに「3×3×3」「3×3×2」というように書かれている場合、これは折り込みの状態を示しています。「3×3×3」は3つ折りを3回、「3×3×2」は3つ折りを2回、その後、2つ折りを1回です。

この折り込み作業が少し難しくて苦手な方も多いのではないでしょうか。私も苦手です。しかも今回、折り込むのはかぼちゃ餡のシート。少し重ためで(これくらい使わないとかぼちゃの色と風味が出にくいのです)丁寧に折り込んでもはみ出しがちですし、色味も黄色で生地と同化しやすいです。生地の高さも出にくいですし。

なので折り込み作業は1回だけ。それでも模様が綺麗に出るように成形を工夫します。この試作では「3×3」と「4×3」の折り込みも試しましたが、4つ折り1回でも充分な感じです。こちらの方が色味のメリハリがついて綺麗だと思います。黄色は生地になじみやすい色なので。キタノカオリや全粒粉など色味の濃い小麦粉を使用される場合は特にお気をつけください。

強力粉→スーパーノヴァ
薄力粉→シュクレ
発酵バター→カルピス
バター→高千穂

木琴堂チャンネルでは長野県【安曇野養蜂苑】のアカシアはちみつを使用しています。

■YouTube

■かぼちゃのマーブル食パンの分量
—-1斤型 9×19.5×H9cm

パン生地

・強力粉 161g(70%)
・薄力粉 69g(30%)
・バターミルク 18g(8%)
・水 131g(57%)
・はちみつ 23g(10%)
・カルピス 11g(5%)
インスタントドライイースト 0.9g
4.6g(2%)
・発酵バター 23g(10%)

かぼちゃシート

・かぼちゃペースト 80g
・牛乳 80g
・はちみつ 50g
・強力粉 20g
・コーンスターチ 20g
・バター 10g

焼成
予熱230℃
焼成190℃で30分

インスタントドライイーストはサフ金です。

焼成温度はお持ちのオーブンに合わせて調整してください。

■かぼちゃのマーブル食パンの作り方

フローチャート

パン作りの流れをざっとさらいます。おおよその時間割です。ここでの時間割は手ごねで作る場合のものです。ニーダーやスタンドミキサーを使用される場合は、生地の状態を確認しながら作ってください。油脂は少し早めに入れてあげてください。

計量・下準備(10分)

ミキシング(3分)

オートリーズ(30分)

塩追加+ミキシング(10分)

油脂追加+ミキシング(8分)

予備発酵

オーバーナイト発酵

復温

折り込み(10分)

成形(5分)

最終発酵

焼成(15分)

かぼちゃのマーブル食パンの生地管理

こねあげ
温度25〜27℃

予備発酵(一次発酵/フロアタイム
25〜28℃、湿度70%以上、1.5〜2時間

最終発酵(二次発酵/ホイロ
30℃、湿度70%以上、2〜3時間

あくまでも目安です。要所、要所で、生地の温度や質感を見極めて進めてください。

下準備

イースト液の準備をします

水、はちみつ、カルピス、インスタントドライイーストを合わせてよく混ぜます。

水温
生地によりますが、水分の温度は25〜35℃(夏場の室温が高すぎる場合は冷水、冬場の室温が極端に低い場合や機械でこねる場合は40℃強まで)の範囲で調整します。*15℃以下の冷水を使用する場合はインスタントドライイーストは粉類の方に混ぜてあげてくださいね。

粉類の準備をします

強力粉と薄力粉、バターミルクパウダーを合わせてよく混ぜます。

バターミルクパウダーはダマになりやすいので、必ずよく混ぜてください。

かぼちゃ餡の折り込みシートを作ります

加熱してつぶしたかぼちゃ、牛乳、はちみつ、コーンスターチ、強力粉を合わせてよく混ぜ、電子レンジで加熱します。500Wで1分ずつ小刻みに温め、生地が少し固めのペースト状になったら、バターを加えて攪拌します。オーブンペーパーにくるんで、20×15cmの長方形に伸ばして、冷蔵庫で冷やします。

使用する際は、生地と同じくらいの固さに戻します。折り込みシートの温度は、生地よりも少しだけ冷たいくらいが折り込みしやすいと思います。体感です。

1

粉類にイースト液を加え、ひとかたまりになるまで混ぜます。

粉っぽさがなくなるまで混ぜたら、生地を30分ほど休ませます。(オートリーズ)

オートリーズ
粉に水分を十分に吸わせ、小麦粉の中のグルテンをある程度育てて、生地の伸びをよくするのに役立ちます。こねの時間を短縮できたり、生地への負荷を減らすことにもなります。

2

生地をこね台に出して、塩を加えてこねます。


本来は生地を少しこねたのちに塩を加えるのが理想です。塩を加えると生地が締まりますし、粉の水和やグルテンの形成を邪魔するようです。その前にしっかりとこねて生地を育てておきたいものです。ただ、今回はオートリーズも充分にとっていますし、家庭で作るパンなので手順を一つ減らすつもりでここで塩を加えています。

加水が70%以下なので少しこねにくい生地ですが、それでも60%以上は入っているので、生地が荒れることはないと思います。初めはこね台に擦り付けながら引き延ばしを中心にこねます。生地がまとまってきたら、折りたたむようにしてこねます。丸めてV字に転がしながらこねてもいいと思います(V字ごね)。それができるくらいの加水です。緩やかに生地の表面がつるんと整ってきます。ここでしっかりとこねておきます。手ごねなので基本的にこねすぎになることはまずありません。油脂はこね上がってからでも大丈夫です。

3

発酵バターを加えてこねます。

油脂をグルテンの隙間に均等に入れこむのには少し時間がかかります。繋がってきたグルテンはちぎると傷んでしまうので、無理に伸ばしすぎてちぎったりしないように心がけます。その際、生地をある程度細かく切って揉み込むと油脂が入りやすいです。可塑性のある油脂も、液体油脂も同様です。液体油脂の方が少し入りにくいですが、10%未満の配合量で手ごねの場合はきちんと入りますので、丁寧に揉みこんで吸収させてあげてください。今回は10%ぴったり。少し時間はかかりますが、必ず綺麗に入るので根気よくこねてください。

生地が油脂を満遍なく吸って、はじめツルツルして台離れの良かった状態から、再びしっとりと手のひらやこね台にはりつくような感触になったら、こねあがりです。

こねあげ温度
25〜27℃

4

生地がおおよそ1.8倍になるまで予備発酵(1次発酵)させます。

温度25〜28℃/湿度70%以上
1.5〜2時間

予備発酵(一次発酵)
オーバーナイト発酵の前に、酵母を活性化させてあげるイメージです。冷蔵庫に入れる前に、しっかりと生地を育てておきます。

5

平たい容器に広げてラップを密着させて、オーバーナイト発酵させます。動画では生地に高さが出すぎてしまったので、軽くパンチを入れています。ガスを抜いて、発酵によって上がった生地温度を手早く下げます。

オーバーナイト発酵
オーバーナイト発酵(低温長時間発酵)は、やり方は様々ですが、多くは10〜22℃くらいで、10時間保存、24時間保存、などというように指南されている講師さんや書籍が多いかと思います。これって家庭ではかなり難しいです。ですから家庭で行うオーバーナイト発酵は、冷蔵庫の野菜室5〜8℃を使用します。4℃以下の冷蔵庫内ですと酵母はほとんど働けないので、野菜室に入れる訳です。

野菜室ではなく普通の冷蔵庫内で熟成させることもできます。この場合はもっと時間がかかりますし、いくつかの工夫が必要です(イーストを増やしたり、復温時間を長めに取ったりなどなど)。

発酵速度というか、発酵の勢いみたいなものは、生地を冷蔵庫に入れる前の予備発酵や、生地保存中の温度や湿度の他、生地に加えるイーストの量や加水量、糖分、酸素の量や生地の酸度などでも変わってきます。それらを工夫すれば、発酵速度はある程度コントロールすることが可能です。これらをコントロールして、最も適したやり方を探してみてください。ご自身の生活リズムに合った方法を探っていくことができるのがオーバーナイト発酵の最大のメリットです。

6

生地を復温させます。

生地温度が戻り、サイズもおよそ2倍になるまで室温で様子をみます。慣れていらっしゃる方は、生地をこね台に出して復温させてあげてください。この場合は乾燥に気をつけてください。

復温
生地を室温近くに戻しながら、ゆるやかに酵母を活性化させてあげることです。温度が上がっていくのと、生地をこね台に出すことで軽いガス抜きになるので、新しい酸素が供給され、この間も発酵は進みます。冷たすぎると生地は伸びが悪かったりして傷みやすいので、軽く緩めてあげる意味もあると思います。

生地温度は15℃前後以上に戻るのを目安にしていますが、生地の状態によって対応は変わってきます。冷蔵庫での発酵が思うように進まなかった場合は、ここで時間調整をします。生地の膨らみが足りなければ復温時間を長めに、生地が冷蔵発酵中に2倍近くまで膨らんでいれば、過発酵になってしまうのですぐに分割・丸め直しに入ります。このとき特に加水が低い生地の場合は生地が傷んで切れやすいので、発酵の具合と生地のゆるみ具合のバランスをとりながら次の作業を行ってください。

7

かぼちゃ餡のシートを折り込みます。

30×20cmに伸ばした生地にシートをのせて包み、40×20cmに伸ばします。

4つ折りにしたら、30×18cmに伸ばします。

詳しくは動画と下記のポイントとコツをご確認ください。

8

成形して型入れします。生地を6分割し、それぞれ2本ずつ重ねて3本の生地を作ります。その3本を3つ編みに編んで、型に入れます。

詳しくは動画と下記のポイントとコツをご確認ください。

9

最終発酵させます。生地が型の8割に届くまで発酵させます。

温度30℃/湿度70%以上
目安2〜3時間

10

焼成します。

焼成
予熱230℃
焼成190℃で30分

かぼちゃ餡が少し重ためなので、型の底の生地の目が詰まりやすいです。ここを綺麗に持ち上げることが模様を綺麗に出すポイントだと思います。焼成の最初の下火が大切なので天板は必ず予熱してください。私は少し厚めの鉄の天板を使っています。

■ポイントとコツ

折り込み作業

折り込みは封筒包みで行いました。初心者さん、そして私のような不器用さんはこちらがやりやすいと思います。ポイントは①生地とシートの固さを揃えること、②シートをのせる場所だけ厚めに伸ばすこと、③無理な負荷をかけるような伸ばしをせずにゆっくりだましだまし伸ばすこと、④打ち粉を活用して生地を滑らせながら行うこと、⑤伸びが悪くなったら焦らずに生地を15分ほど冷蔵庫で休ませてから作業を再開することなどでしょうか。ポイントを心に留めながら行うと生地が荒れることはあまりないと思います。

それでも折り込み作業は4つ折り1回に留めています。あまり薄い生地にすると層が潰れたり、かぼちゃの黄色がパン生地の色に馴染んでしまって、マーブル模様が綺麗に出なくなってしまったからです。私が不器用なだけかもしれないんですけど。物足りない方はあと1回、3つ折りの工程を入れてみてください。

かぼちゃ餡のシートをほんの少しだけ冷たくしておくと、失敗が少ないような気がしています。シートの方が少しだけ柔らかめなので。

3つ編み成形

一般的には3本にカットして3つ編みをするかと思うのですが、今回のように6本、あるいは12本でも成形できます。6本の場合も12本の場合も2本を重ねて1本にします。12本に分割した場合は3つ編みを2本編んで、縦、あるいは横に重ねて型入れします。いずれもより複雑な模様になります。ちょっと面白いので機会があればやってみてくださいね。

生地がうまく伸びないときは、焦らずに冷蔵庫へGOです。休ませながら成形を行っても、酵母量が少なめなので、発酵が進みすぎてしまうということがあまりありません。オーバーナイト法の強みです。

いつもの決まりごと/オーバーナイト法の生地

冷蔵庫から出したての生地はきちんと発酵していても冷たいままです。そのまま乾燥を防ぎながら、10℃〜15℃にまで生地温度が戻って、さらに生地が期待する大きさに膨らんでくるのを待ちます。これが復温です。このとき、発酵に利用した容器のまま復温させる場合は、生地の見極めがしやすいです。温度は測ってチェックできますし、大きさは膨らみを目視できます。ただ、この場合、容器が冷たいままですし、生地も広がっていないので復温に時間がかかるとともに、生地の発酵状態にムラが出やすいです。

慣れてきたら、生地をこね台に出して復温させてみてください。優しくパンチを入れて新しい呼吸を促してあげるとともに、そのまま乾燥を防ぎながら10℃〜15℃にまで生地温度が戻って、また全体的にふっくらとしてくるのを待ちます。発酵倍率を確認しにくいんですが、何度か作って慣れてみてください。

いつもの決まりごと/オーバーナイト発酵で生地がうまく膨らまない場合

冷蔵庫内の温度が低すぎたり、予備発酵(一次発酵・フロアタイム)が短すぎたりして、生地が充分に膨らんでいなかった場合は、この復温の工程で発酵具合を調節します。復温時間は室温にもよりますが、1〜2時間ほどかかることもあります。だから早めに生地を冷蔵庫から出して、その間は別の家事を……というように、ご自身の日常生活のもろもろのお仕事と平行でパン作りを行うのがベストです。オーバーナイト法の利点は、ある程度の「ほったらかし」が許されるところです。

■食材

強力粉


薄力粉


バターミルクパウダー


インスタントドライイースト

サフの金です。少しだけ糖の量が多いので。ただ赤でも十分に膨らみます。糖12%が使い分けのラインみたいですが、このくらいだとどちらでも大丈夫のようです。こちらは冷凍して保存しています。特に凍って固まったりしないので、そのまま必要量だけすくいだして使います。


発酵バター


バター

■道具

ボウル

こねるときはガラスボウル。発酵の具合も全方向から確かめられます。経年劣化の濁りみたいなものも出にくいと思うので、長く使えるのではないでしょうか。私はiwakiのガラスボウルを使用しています。


野田琺瑯のバット

オーバーナイト発酵で使用しているのは野田琺瑯のバット(アイボリー)です。温かみがあって好き。ホワイトシリーズの方だと在庫があるみたいなのでホワイトシリーズのリンクを載せておきます。アイボリーはもう販売しないようです。悲しいな。

小さい方からキャビネサイズ、21枚取りです。今回使用しているのはキャビネサイズです。


スケール

パン作りに欠かせないのはスケール。3kgまで、0.1g単位で計ることができるものをおすすめします。私が使用しているのはタニタのスケールです。

ABOUTこの記事をかいた人

アトリエミツトパンははちみつとパン(とトマト)をこよなく愛する晴が主宰するアトリエです。 はちみつの魅力や可能性、レシピの発信を行っています。 自家製のパンについても勉強してきたことをじゃんじゃんシェアしていきますね。 どうぞよろしくお願いします。