手折りのクロワッサンを作ります。ごくごく基本的な配合と工程のクロワッサンです。
クロワッサンは取り組むまでは気が重いんですが、やり始めると意外と単純。一緒に練習しましょう!
#クロワッサン
#折りこみ生地
こちらに面白い記事がありましたのでシェアします。
中学校の入試問題だそうです。クロワッサン(正確にはパイ生地)の層が焼成によってひらく仕組みやコツなど解説されています。大人でも勉強になります。
面白いですね!
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材料
6個分
6個つくる | 粉量240g
✦ デトランプ
✦ 折りこみバター
発酵バター | 120g |
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材料の置き換えは自己責任でお願いします。
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E65は北海道産の準強力粉。タンパク値12.2%、灰分0.7%で、高灰分ならではの独特な強い味と香りがあり、クラストはさくっとした食感になります。
E65はタンパク値が準強力粉にしては高め、このタンパク質の70-90%がグルテン構成要因です。使用感としては、特にグルテン量が多いという印象は受けませんが(タンパク値の高低がそのままグルテン量の高低とピッタリ一致するということではないのかな)、今回はここに準強力粉全粒粉や薄力粉、ルヴァン、モルトシロップ、バターなども合わせて、生地の伸展性をあげています。
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ポラリスはタンパク値5.8%、灰分0.35%の薄力粉です。抜けるような白さの粉で驚きの低タンパク値です。わたしはこちらがお気に入り、何にでも入れちゃいます。使い勝手が良くて大好きな薄力粉です。
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スムレラT70は北海道の石臼挽き準強力粉全粒粉。タンパク値9.1%、灰分0.79%。粒子が非常に細かいので全粒粉であってもキメの細かい生地になります。
今回の配合の肝となる粉です。クラストの適度な苦味と雑味になります。ぜひ置き換えなどせずに使用していただきたいです。
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リロンデル1895はセミドライタイプの市販酵母です。低温長時間発酵に特化した酵母。
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ルヴァンリキッドは最近はTA200で管理しています。
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バターは高千穂発酵バターを使用しています。大好きすぎて常にこれを使っています!
✦ ルヴァンリキッドの作り方はこちらをチェック
ベイカーズパーセント
✦ デトランプ
E65 | 70% |
ポラリス | 18% |
石臼挽き全粒粉 スムレラT70 | 8% |
グラニュー糖 | 7% |
塩 | 1.6% |
バター | 3% |
牛乳 | 50% |
水 | 5% |
モルトシロップ | 0.4% |
ルヴァンリキッドTA200 | 8% |
リロンデル1895 | 1.6% |
✦ 折りこみバター
発酵バター | 50% |
作り方
🥐フロー
■デトランプを仕込む
捏ねあげ温度
20-23℃
フロアタイム
20-23℃ / 30分
冷凍発酵
冷凍庫-18℃ / 60分
冷蔵発酵
冷蔵庫2-8℃ / 24時間以内に使用する
冷蔵8時間以内に使用する場合は冷凍工程は省く(フロアタイム後すぐに冷蔵してOK)。
ただ、ご家庭の冷蔵庫の温度推移にもよるので、まずは何度か作って確かめてください。我が家の冷蔵庫、一番冷える場所の温度推移は2.5-8℃です。このくらい冷えていると、冷蔵庫の開け閉めが頻繁でなければ、8時間まではもってくれます。
■折りこみバターシートを仕込む
冷蔵
冷蔵庫2-8℃ / 15分
■折りこみ作業「4×4」
環境温度
18-23℃, 35%以上
■生地のラミネーションから最終発酵まで
✂︎分割
6分割
最終発酵
25℃, 70%くらい / 70-90分 / 1.5倍くらい
■焼成
🔥焼成
予熱 250℃
焼成 250℃ / 10分, 200℃ / 5分くらい
フローは目安です。生地の状態を見極めながら、各工程を調整してください。焼成温度はお持ちのオーブンに合わせて調整してください。クロワッサンは一般的なパン作りとは工程が異なります。まずは一度、一連の流れを掴んで、いくつかのコツを知っておくことをおすすめします。
🥐デトランプを仕込む
1
温かい水にモルトシロップと酵母を溶かす。
水温は28-30℃。酵母が溶けやすく、働きやすい温度帯にします。インスタントドライイーストは溶け残り厳禁!必ず全てとかして下さい。
水量が少ないので、酵母をふり入れたあとは、少しふやかしてあげると溶けやすいですよ。
今回は捏ねあげ温度の設定が低め。仕込み水の大半を占める牛乳を温めることができません。酵母の溶け残り、不活化の酵母を残さないためにも、酵母は温水に入れてしっかり溶かします。
2
粉類とバターを全て合わせておく。
3
メインボウルに、牛乳、ルヴァンTA200を合わせる。そこに酵母を溶かした水を加える。混ざったら、2で合わせておいた粉類とバターを加える。
全て合わせて、ざっくりと切り混ぜる。
ここではまだバターのかけらがそのまま残っている状態です。粉っぽくても大丈夫。このあと捏ね台の上でしっかりと混ぜていきます。
4
まだ少し粉っぽいうちに、捏ね台に出す。
捏ね台の上でさらに切り混ぜする。切って集めてを1セットで10回くらい。
バターのカケラが見えなくなるまで、念入りに切り混ぜます。
生地に均一に水分がいきわたると、生地がしっとりして重たくなってきます。バターのかけらも見えなくなります。そこまでしっかり切り混ぜしてね。
5
次は、捏ね台に生地を引き伸ばして、集める。引き伸ばして集めてを1セットで5回くらい。
ここで少しだけ引き伸ばしと折りたたみをすることで、混ぜむらを完全に無くします。「コーンのハード」でもやっています。生地を強くしたくないけど、均一には混ぜたい、というときに有効です。
生地の状態はつながりがあまく、しっとりしているけれど全く伸びない状態。表層もポコポコしています。
でも、折りこみ生地は、翌日の工程で生地にたくさん力をかけるので、初日はこんなもので大丈夫!
こねあげ温度
20-23℃
6
フロアタイムをとる。
フロアタイム
20-23℃ / 30分
市販酵母の配合量1.6%、これは一般的にはクロワッサンにしては少なめの配合量です。ここまでの工程を手早く作業していると、捏ねも浅く温度も低いので、酵母が目覚める隙がない場合があります。30分くらいかけて起こしてあげます。
このあと冷蔵庫や冷凍庫に入れはするんですが、このフロアタイムで微生物にスタートが掛かると、生地の低温管理時に微生物がゆるゆる働いてくれます。
ほんの少しの配慮ですが、後半の工程で発酵速度などにも影響が出てくる可能性もあるので、ぜひフロアタイムを取ってあげてください。
7
生地を冷凍して発酵速度をゆるめる。
発酵速度をゆるめる
冷凍庫-18℃ / 1時間
この後の冷蔵発酵を8時間以内に切り上げる場合は、発酵しすぎるということはないと思うので、冷凍発酵の工程は省いてOK。逆を言えば、冷凍工程を省く場合は、寝かせる時間は8時間が限界です。8-24時間、冷蔵発酵させる場合は、念のため、冷凍庫に1時間ほど入れて、発酵速度を抑えておきましょう。
私はポリシートに包んでいます。厚さは0.08mm、かなりの厚手です。大きめのポリ袋を切りひらいたものです。これが使い勝手がよく、大変おすすめ。リエビトマードレもこれに包んでいます。
8
冷蔵発酵させる。
冷蔵発酵
冷蔵庫2-8℃ / 24時間以内
冷蔵庫は下段の一番奥が最も冷えるのだそうです。我が家の冷蔵庫の下段奥は2.5-8℃くらいを行ったり来たりしています。ご家庭の冷蔵庫の温度推移を確認して、冷蔵発酵の時間を調整してみて下さい。
ここについてはいろんなご意見があると思います。今回は、あくまでも生地を休ませて伸びのいい生地を作ることが目的です。クロワッサンは副材料の風味を楽しむパンと言っても過言ではないので、味わいとしてはストレート法で十分に美味しいです。ただ一つの指標として、冷蔵の低温長時間発酵のなんとなくのイメージをお伝えします。
基本的には、冷蔵時間は自由です。ただある程度の時間を確保しないと、低温長時間発酵の恩恵を受けられないと思います。クロワッサンに限らず、私がいつもご案内している時間をご紹介します。だいたいパターンはこの4つ。
❶最短は8時間。
❷無難でとり入れやすいのは12-18時間。
❸理想的なのは18-24時間。
❹こだわりがあるなら24時間以上も(長熟だとチルド室使ったりします)。
なんかいろいろ考えて、なんとなくこの4パターンでイメージしています。ただのイメージですが💦
酵母量や酵母の性質、酵素の働き、生地のつながり、最も大切なのはこれらによる生地の香味と旨みの増加具合、あとは目指す食感、それから小麦の水和……などなど、山ほどあるいろんな要素の兼ね合いで選択する、という感じでしょうか。
つまり、要約すると、8-24時間の範囲でとるのが一般的、中でも18-24時間は特におすすめ、ということです。
🥐折りこみバターシートを仕込む
冷たいバターを麺棒で叩いたり揉んだりしながらマッサージして、バターの伸展性をあげる。表、裏、表、3-4回、切って重ねて満遍なくマッサージする。14×14cm、5mm厚に伸ばす。
冷蔵庫で冷やす。
冷蔵する
冷蔵庫2-8℃ / 15分
折り込みの15分くらい前に折り込みバターを仕込むのがおすすめ。15-20分くらいでバターが程よく冷やされるので、折りこみ直前に少し揉んであげると、ベストな状態になりますよ。
🥐折りこみ1回目
1
冷蔵庫から出したデトランプを14cm強×28cm弱に伸ばす。バターがのる部分を厚め、それ以外の部分をうすめに伸ばす。
内側に折りこむ部分の生地を薄めに。小さな配慮ですが、やっておくと、のちのち、層のズレが出にくかったりします。バターを包むのに、生地のもたつきも少ないですし、小さなひと手間ですが、やってあげましょう。
2
バターを麺棒で叩いたり揉んだりして満遍なくマッサージして、生地の上にのせる。
冷蔵したバターは冷えてかたくなっています。必ず、冷蔵後はマッサージ。この後の工程でも同様です。バターは冷蔵後はマッサージ。合言葉です!
やわらかさはどのくらい?、と聞かれることが多いのですが、とにかく硬いより柔らかい方がずっといいです。生地温度が冷たいので、生地で包めばバターはまた少し冷やされます。冷たくなったバターを、生地の上からマッサージ、これで再び、バターが冷たいまま伸展性があがるという仕組みです。
1回目、2回目の折りこみは、意外と冷やしすぎによる失敗が多いと思います。要注意です!
3
バターを生地で包む。
「わ」の部分をカットする。
4
バターを閉じた向きと垂直の向きに生地を伸ばす。50-55cmくらい。
上下の辺を切り落とす。
4つ折りする。
5
生地を冷蔵庫で休ませる。
レスト
冷蔵庫2-8℃ / 20分
折りこみ生地は適度に冷やします。冷やしすぎにも注意です。特に折りこみ初期はバターの層が厚いので、冷やしすぎると、バターの伸展性と生地の伸展性の差が出やすいです。
だからここでは冷蔵庫20分。慣れてきたら15分でも◎。意外と冷えすぎによる失敗って多い気がします。注意してね。
🥐折りこみ2回目
1
生地を横に伸ばす。15cmくらい。
2
生地を縦に伸ばす。55-60cmくらい。
短い辺を切り落として4つ折りする。
3
生地を冷蔵庫で休ませる。
レスト
冷蔵庫2-8℃ / 30分
🥐最後のラミネーションから焼成まで
1
生地を伸ばす。短い方の辺が20-22cmくらいになるまで。
2
生地を冷蔵庫で休ませる。
レスト
冷蔵庫2-8℃ / 10分
3
生地を伸ばす。短い方の辺が26cmになるくらい。厚さは5-8mmくらい。今回は26cm×32cmくらい。
それぞれの辺を1cmほど切り落として、縁を整える。
整ったらこんなサイズ。
4
短い辺が8cmの直角三角形になるようにカットする。
5
冷蔵庫で休ませる。
レスト
冷蔵庫2-8℃ / 10分
6
成形する。
直角三角形の直角の部分を引っ張って、水平に伸ばす。
三角形の底辺を手で押さえて、反対の指で頂点を引っ張って、縦に伸ばす。
生地をくるくる巻いていく。
巻き終わりの先っぽを、ちょっとだけ伸ばして、クロワッサンの下に敷きこむ。
7
最終発酵をとる。
最終発酵
25℃, 70%くらい / 70-90分 / 1.5倍くらい
・生地が1.5-1.8倍になる
・透明感がでる(出にくいかも)
・フォルムがまるくなる
・クロワッサンの端がくたっと天板に寝て見える
・層がところどころ立ち上がって剥離して見える
・弾性が抜けてふるふるする……など
8
ドリュールをする。
9
焼成する。
🥐完成!
ノート
酵母と製法🥐
🥐酵母:ルヴァンリキッドTA200
今回使用しているのはルヴァンリキッドTA200、前種1:E65 2:水2 で継いでいるルヴァンです。それだけでは発酵と分解のバランスがよくないので、市販の酵母リロンデルを加えています。サフ赤での置き換えも可能です。
🥐製法:オールインの低温長時間発酵
オールイン製法
一般的には後入れが好まれる材料(塩や油脂など)も、全てはじめに投入してミキシングを行う製パン法。
低温長時間発酵
冷蔵長時間発酵、オーバーナイト発酵と工程がかぶることも多いため、同義で使用されがち。
生地を低温で発酵熟成させる製パン法。パン生地を低温、もしくは冷蔵庫に入れることでイーストの活動がゆるやかになり、ゆっくりと発酵する。発酵熟成の期間はある程度の長さを確保しないと期待するほどの効果は見込めない。仕込みの時間によってはひと晩寝かせることもできるので、オーバーナイト発酵と呼ばれる。もちろんひと晩、以上寝かせる場合もある。
🥐折りこみ:「4×4」
折りたたみの回数を表す場合に、このように表現する。今回は4つ折りを2回、行っているので「4×4」。3つ折り3回であれば「3×3×3」。