湯種製法

英語では Yudane Method , tanzhong method と書く。湯種 を使用してパンを焼く製法。

生地の水分値を無理なくひき上げることができるので、パンがしっとりする。老化 が遅いパンが焼ける。食感はもちもちする。また製パン中も糖化がが促進され、パンが甘くなる傾向にある。

作り方によっては、湯種そのものの糖化も狙うことができるので、仕上がったパンは焼き色がより濃くなり、より甘くなる。

湯種に全粒粉やグラハム粉などが入っている場合は、熱を加えたり寝かせたりすることで吸水がより進むので、パンの食感がまとまり食べやすくなる。

一方でデメリットは 変性グルテン や 糊化でんぷん が生地作りを遅らせるので、ミキシングに時間がかかること。また、糊化でんぷんがグルテンの伸びを多少阻害すること。仕上がった生地も比較的伸展性が低いので扱いがデリケートになる場合がある。湯種を仕込むために手数も増えるし、それを保管管理するために場所コストもかかる。結果として、手数が増え、場所をとり、捏ね時間が伸び、繊細な作業が必要になり、パン生地の窯伸びは控えめになる

以下のものもすべて湯種の一種と考えられる。

個人的な考察ですが……湯種、湯ゲル、鍋炊き湯種、いずれもパン生地に加える効果はそれぞれ大きくは変わらないと思います(えー、と言われそうですが……)。

生地の水分値を底上げすることができるので、パンがしっとりします。パンの老化はアミロースが水分を手放すことから始まりますから、パン生地の中に水分が多ければ多いほど老化が遅くなるというわけです。これは保水性が高いとも表現できます。
また、糊化でんぷんが入るので、製パン中も生地の糖化が進み、生地がより甘くなる傾向があります。湯種や湯ゲルのように酵素がギリギリ失活しない環境下で管理された湯種であれば、酵素の働きでさらに甘みが増します。鍋炊き湯種はこの内ではありません。80℃まで炊いてしまうので。
食感はもちもちします。日本人好みのパンになるんですね。さすが日本発祥の製パン法です。

それぞれに大きな差が出るとすれば、湯種生地の仕込み時に65℃以下を保てるかどうかによってβアミラーゼの働きが変わることと(65℃で小麦の糊化は90%というデータがあります)、湯種生地の流動性によってミキシング時の製パン性に差が出ることくらいだと考えます。ただこのミキシング時の製パン性がパン屋さんのように大きな機械でたくさんの量を仕込む場合にはかなり重要なのでしょうね。

家庭で仕込むなら、そしてアトリエミツトパンがおすすめしている冷蔵発酵をとるなら、湯種か鍋炊き湯種で十分な気もします。湯ゲルを仕込むのって温度計も必要だしちょっと手間なので……。

ちなみに湯種製法は日本発祥だが、中国のパン職人が記した書籍から世界に広まったので、英名は中国語で伝わっている。現在はYudaneでも通じることがある。

ABOUTこの記事をかいた人

アトリエミツトパンははちみつとパン(とトマト)をこよなく愛する晴が主宰するアトリエです。 はちみつの魅力や可能性、レシピの発信を行っています。 自家製のパンについても勉強してきたことをじゃんじゃんシェアしていきますね。 どうぞよろしくお願いします。