ポーリッシュ法とは?

ポーリッシュ種と呼ばれる水種(液状の発酵種)を使用する製パン法です。使用する粉の一部に、それと同量の水(ベイカーズ%内)を合わせ、酵母を加えて、事前に発酵させます。この発酵水種を、本ごねでその他の材料とともにこね合わせてパンを作り上げるメソッドです。

↓これがポーリッシュ種です。

粉量の10〜30%と同量の水(ベイカーズ%内)、酵母と合わせて、3倍まで発酵させたものです。これを残りの材料と合わせて、本ごねをしていきます。

作り方、使い方とともに、その歴史やメリットデメリットを確認していきましょう!

■ポーリッシュ法の流れ

まずはポーリッシュ法のやり方や手順を、山食パンのレシピを例にあげてご紹介します。

ポーリッシュ法で仕込む山食パンの作り方 | YouTube

■ポーリッシュ種の作り方

ルヴァンリキッドの場合

強力粉40g、水40g、ルヴァンリキッド40gを合わせてよく攪拌します。混ぜあげ温度は23〜24℃です。その後、28℃で3時間ほど発酵させます。

すぐ使用することもできますし、冷蔵庫で一晩、寝かせてから使用すこともできます。

本ごねの材料

・ポーリッシュ種 120g
・強力粉 190g(76)
・スキムミルク 17g(7)
・水 115g(46)
・はちみつ 20g(8)
・塩 4.5g(1.8)
・発酵バター 20g(8)

粉量250gのうちの24%をポーリッシュ種に使用しています。


インスタントドライイーストの場合

インスタントドライイーストの場合は強力粉75g、水75g、インスタントドライイースト0.3gを合わせてよく攪拌します。混ぜあげ温度は23〜24℃です。その後、生地の量が3倍に膨らむまで、28℃で発酵させます。

すぐ使用することもできますし、冷蔵庫で一晩、寝かせてから使用すこともできます。ただ、インスタントドライイーストの場合は、一晩、休ませてから使用する方がポーリッシュ種の良さが活きると思います。時間がある場合は冷蔵庫で追熟させてください。理由は、下記「ポーリッシュ法の特徴」で確認してください。

本ごねでは1gのインスタントドライイーストを追加します。

本ごねの材料

・ポーリッシュ種
・強力粉 175g(70)
・スキムミルク17g(7)
・水 100g(40)
・はちみつ 20g(8)
・インスタントドライイースト 1g(0.4)
・塩 4.5g(1.8)
・発酵バター 20g(8)

粉量250gのうちの30%をポーリッシュ種に使用しています。ポーリッシュ種に使用する粉の割合は10〜30%くらいが一般的です。レシピによっては40%〜60%使用の場合もありますが、特殊な例かと思われますので、基本的には30%未満、と覚えておくと良いかもしれません。

■ポーリッシュ法のやり方

フローチャート

ポーリッシュ法で作るパン作りの流れをざっとさらいます。

事前にポーリッシュ種を仕込みます。

仕込んだポーリッシュ種をその他の材料と合わせて本ごねに入ります。ここからは一般的なストレート法の製パン法と同様の手順で進めます。

生地がこねあがったら一次発酵をとります。

2倍に膨らんだら、丸め直してベンチタイムをとります。

生地を成形し、油脂をぬった型に入れます。

二次発酵をとり、生地が型の8割ほどの大きさになったら焼成します。

■ポーリッシュ法の特徴

メリット

・酵母がよく働き、生地の風味が良くなる
・窯伸びする
・歯切れの良い食感になる
・バゲットなどの生地の内層ははちの巣のようになりやすい
・本ごねの発酵時間が短くなる(らしい)
・パンの老化が遅くなり、日もちする
・本ごねはストレート法と同じなので、日常生活に取り入れやすい
・液種なので本ごねで生地に混ぜやすい
・ストレート法に比べるとイーストの使用量を抑えることができる

デメリット

・事前に発酵種を仕込む手間がかかる
・窯伸びする分、味わいが淡白に感じることがある

理由と考察

ポーリッシュ法は、生地の一部を事前に発酵させておく発酵種法のひとつです。その他に中種法や老麺法があります。

中種法とは?

中種法の発酵種は液種ではなく、水分の少ないかための生地です。また、塩や砂糖を加えて仕込むなどいくつかのバリエーションがあります。

老麺法とは?

老麺法の発酵種はリーンなパン生地です。事前に仕込んだパン生地の一部を本ごねで加える製法です。

これらの二つの製パン法についてはまた別のコラムで詳細に触れたいと思います。今回はポーリッシュ法です。

ポーリッシュ法の発酵種は液状です。トロトロのテクスチャーで、水分が多い状態なので、酵母や酵素は活発に働きます。ポーリッシュ種の中には発酵生成物がたっぷり。なので生地の風味はグッと良くなります。ひと晩寝かせて使用する場合はひとしおです。

ポーリッシュ種を仕込む際にはしっかりと攪拌するので、グルテンの一部は破壊されています。ポーリッシュ種の脆いグルテンは、低負荷でゆっくりとこねあげることで伸びの良い生地になります。窯伸びするのも、歯切れの良い食感になるのも、バゲットなどの生地の内層がはちの巣のようになりやすいのもこのためです。ただ、ポーリッシュ法の生地はボリュームが出やすいので、生地の味わいは密なものではなくなります。そのため少し淡白に感じやすいです。それを補うスキムミルクやはちみつはポーリッシュ法では欠かせない隠し味です(食パンなどの場合)。

ポーリッシュ種の生地の中は酵母や乳酸菌などの働きで弱酸性になります。弱酸性では発酵はかなり安定します。なので本ごねでは発酵時間の短縮になるはずなんですが、これについては私はあまり実感したことがないです。理論的にはそう言われています。この弱酸性のおかげで焼成後の生地の老化や腐敗も遅くなります。

……ということだと思うのですが、お気づきのことがあったらコメントなどで教えてください。

■歴史

もともとは1840年、ポーランドの貴族によって開発された製パン法だそうです。その後、オーストリアからフランスに広まりました。

ポーランド発祥だからポーリッシュ法なんですね。PolishとPoolishでスペルはちょっと違いますが、語源はPolishだそうです。湯種も日本の名前が付いていればいいのに、と思っちゃいますよね。

ちなみに湯種製パン法は「tanzhong method」です。湯種はウォータールー(water roux)です。日本で生まれた製パン法ですが、中国の書籍から世界に紹介されたので、あまり馴染みのない呼び名になってしまったんですね。でも今はYouTubeなどのSNSのおかげで、「YUDANE」でも伝わるような気がします。情報化社会ってすごい!

■ポーリッシュ種の使いどき

ポーリッシュ種の使いどきの見極めは書籍によっていろいろあります。

こんなことが言われています。

  • 生地が3倍になったら。
  • 生地がいちどピークに達してから少し種落ち(発酵種の表面が少し沈み始めること)したら。
  • 生地の表面にシワがよったら。
  • 気泡がフルフルになって揺らしたときにプツプツ割れるようになったら。
  • 種落ちしてから冷蔵庫に入れてひと晩、寝かせてから。
  • 種落ちする前に冷蔵庫に入れて翌日、再び表面がぶくぶくになったら。
  • 種落ちする前に冷蔵庫に入れて翌日、再び表面がぶくぶくになって、それから種落ちしてから。

……などなどなど。粉や酵母の種類によっても微妙に違いそうですし。加温時間の目安もイーストや酵母の添加量によって3〜15時間と幅があります。

使ってみた体感としては、生地が3倍くらいになって、気泡を揺らしたときにふつふつと消えるようになったら使用するか、あるいは生地が3倍になったら冷蔵庫に入れて、翌日復温させて使用する、というところで落ち着きました。あまり差が感じられなくて……。皆さんも実際に使って納得いくやり方を見つけてください。

2 件のコメント

  • いつも見ています
    ポーリッシュについて勉強していてとても参考になりました。
    ポーリッシュのメリットとして、釜伸びと歯切れの良さがありますが、
    釜伸びしやすい生地はグルテンが強い、歯切れのいい生地はグルテンが弱いという認識だと
    相反するような気がして、なんでだろうと、凄く気になります。

    • こんにちは^^
      ご覧いただき、ありがとうございます。

      これはとても難しい質問なので、私も一緒に考察させていただきたいと思います。明確なお答えにならないと思いますが、大丈夫でしょうか?? なので菜穂さんももし何か発見や気づきがあったら、ぜひぜひ教えてください。ちょっと長くなります。そしてちょっと曖昧なので編集しながら……。

      ご質問は、窯伸びと歯切れの良さが同じ生地の中で両立する理論とはなんなのか、ということですよね。←難しいので再確認です。

      ポーリッシュ法での窯伸びについての私の見解なんですが、①オーブンの熱で熱された際に酵母がとても活発になってガスをたくさん発生させる・水分が温められて水蒸気になる、②それによってパン生地の中でガスや水蒸気が膨らむ、③伸びの良いグルテンがそれを抱き込んで膨らむ、④気泡を抱き込んだグルテンがグルテンの網目を所々切りながらさらに縦に膨らむ(繋がっている手を解いていくのでさらに高さが出ます)、というような段階をふんで膨らんでいくイメージとして捉えています。これだと窯伸びと歯切れの良さは両立しますよね。グルテンの繋がりが所々脆いため、生地は高く伸びますし、それを食べた際には歯切れも良くなるのだと思います。このグルテンの脆さがポーリッシュ法の特徴です。仕込みの際のグルテン骨格の破壊と、酵素の活発さとpH低下によるグルテンの崩壊、と言っていいのかな。本ごねでは低負荷で少し念入りにこねます。そうすると生地自体がとてもとてもよく伸びる生地になります。

      ここまでは菜穂さんも理解してくださっているのだと思うのですよね。わからないのは、おそらく、一般的に「よく膨らむパン生地のためにグルテンを強化しなさい」と言うくせに、④でグルテンの脆さや崩壊を要求する点ですよね。これはグルテンの構造として目を細かくする作業と伸びを良くする作業があると思うんですが、そのバランスの取り方なのかな。……このあたりは私もなんとなくしか理解できていない部分です。これをさらに言葉にして理論的に説明するとなると難しいですね。悩ましいです。

      「パン生地を膨らませるためにグルテンを強化します」と言う表現は間違っていないと思います。グルテンがしっかりと繋がっていないと、生地はガスを閉じ込めることが出来ないのでぺしゃんこになってしまいます。だからよくこねて(生地がガスを閉じ込めることができる状態にするために)グルテンを強化します。しっかりこねたところにさらにパンチの工程で引き伸ばしと折りたたみを繰り返すような強化をし、そのうえ丸めや成形の工程でしっかりと生地を引き締めたりするとパン生地ってよく伸びます。これはオールマイティに強化されたグルテンです。網目をより細かくするというイメージなのかな?一方で伸びを中心に強化するとふわふわに、コシを中心に強化すると少しひきの強いパンになるのかな?このように「グルテンの強化」っていろいろあるのだと思います。グルテンの網目の方向によってもホイロや焼成での伸び方が違ってくるみたいです。難解ですね……。

      私も今の時点で明確に「これ」と道筋を示すことが出来なそうです。考えているのは、グルテンの強化にはいろいろな形があるな、ということや、窯伸びを支えるものも卵やバターなどの副材料の影響もかなりあるな、ということ。網目の細かいグルテンと伸びのいいグルテンはまた違うのかな、とか。そういったものを全てひっくるめて、普段は「よくこねて、あるいはパンチを入れて、グルテンを強化します」と表現しているよな、とか。

      それから、よくバゲットなどの生地で「薄膜ができるほどこねすぎてはいけない」と注意書きされることがあるんですが(私もそれに近い言い方をするんですけど)、薄膜が出来るくらいグルテンを強化しても大小の不揃いな気泡は入ります。「薄膜ができてよく伸びるけど焼成の際にある程度崩壊する脆いグルテン構造になるように強化する」、というのが大事なのだと思います。←これ、言っていることが対極にあるんですが、言葉だとこうなっちゃうんですよね、難しいです。そもそもバゲット生地などは窯伸びしないとクープも開かないしエッジも立ちませんよね。窯伸びはするけれど、グルテンの膜が所々で破れて気泡が繋がるので大小の不揃いな気泡が入ります。これがポーリッシュ法ととてもマッチする部分なのですが、ということは「窯伸び=オールマイティに強固なグルテン」とは一概に言えないのかな、思います。

      うーん、こんがらがって長くなってしまったんですが、菜穂さんの「なんでだろう」は私にとっても「なんでだろう」と考察し直すきっかけになりました。でも難しいです。パン屋さんではないので、これも間違っているのかもしれません。あまりお力になれなくて申し訳ないのですが、菜穂さんもまた「なんでだろう」と考えてみてもらいたいです。こういう考察や討論ができるとみんながパン作りを好きになるきっかけになってくれるのかな、と思います。

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