ルヴァンシェフの作り方

ルヴァンシェフとは?

ルヴァンの元種のことです。正式にはルヴァン・ナチュレル・シェフ/levain naturel chefと呼ぶようです。主にライ麦や小麦から起こした野生の酵母を育てたもので、粉に対する水の割合によって、ルヴァンリキッドとルヴァンシェフとで呼び分けるようです。ルヴァンシェフは水分少なめの固めの発酵種です。ルヴァンリキッドは水分多めの水種です。

これがルヴァンシェフです

ルヴァンリキッドについてはこちらの記事をご覧ください

ルヴァンシェフは「ルヴァンデュール/Levain naturel dur」とも呼ばれます。durって固いという意味みたいですね。なのでルヴァンデュールもまたルヴァンの固めの発酵種のことを意味するのだと思います。

一方でルヴァンシェフという言葉には他にも「親種、元種」という意味もあるようです。発酵種を起こしたものを初種と言ったりします。それを親種にして、より発酵力の強い安定した仕上げ種を完成させるときなどに使う言葉、「親種」がルヴァンシェフのことですね。ただこの辺りの用語は私も理解が曖昧なので(フランス語、全く分からなくて)、気になる方はご自身でもお調べくださいね。そして良い知恵があったらぜひ教えてください。

私の継いでいるルヴァンの固めの発酵種は、1日おきに継いでずっと育てているものです。ここでは「ルヴァンシェフ(デュール)」と定義したいと思います。一番初めに読んだ書籍がルヴァンシェフという言葉を使用していたので、刷り込みのように覚えてしまいました。

ルヴァンシェフ(デュール)の詳細な水分量については、明記されている書籍が少なかったのですが、粉量に対して50〜70%の水分量のものを指すようです。TA150〜TA170と表記します。粉の割合(100%)と水の割合(50〜70%)を足しているんですね。ルヴァンリキッドは粉量に対して100〜125%の水分量のものです。TA200〜TA225と表記します。

この記事ではルヴァンシェフ(デュール)の作り方や使い方、メリットデメリットなどを確認していきます。

■ルヴァンシェフ(デュール)の作り方

ルヴァンシェフ(デュール)は0から起こすこともできます。その場合も、はじめはルヴァンリキッドと同じ工程をたどって種起こしをするので、管理しやすいルヴァンリキッドを先に仕上げてしまっても特に問題ないと思います。

そこで、ここではルヴァンリキッドのハイドレーションを徐々に変えながらルヴァンシェフ(デュール)を作っていきます。3日かけて継いで水分量70%に、さらに発酵力を高めて、酵母に元気を付けていきます。完成後も1〜2日おきにリフレッシュしながら継ぎつづけることができます。

ルヴァンリキッドはこちらの工程で起こしてください。


参考にした書籍をこちらに載せておきます。

*参考
志賀勝栄著(2007)『酵母から考えるパンづくり』柴田書店

志賀勝栄著(2014)『パンの世界 基本から最前線まで』講談社選書メチエ

■工程

 1日目

・ルヴァンリキッド 50g
・準強力粉 63g
・水 37g

材料を全て合わせてよく攪拌します。しっかりと混ぜ合わせたら28℃で3時間保管します。

3時間加温後生地は2倍近くに膨らみます。

その後、冷蔵庫でひと晩、休ませます。


 2日目

・ルヴァンシェフ 50g
・準強力粉 59g
・水 41g

容器の底の方からルヴァンシェフ50gを取り出し、継いでいきます。材料を全て合わせてよく攪拌します。しっかりと混ぜ合わせたら28℃で3時間保管します。

3時間加温後生地は2〜3倍近くに膨らみます。

その後、冷蔵庫でひと晩、休ませます。

長時間保存した発酵種の表面は酸素に触れて乾燥しています。酸化しているとともに、雑菌が増えやすく、酵母や乳酸菌が弱っているので取り除いて破棄します。


 3日目

・ルヴァンシェフ 50g
・準強力粉 59g
・水 41g

容器の底の方からルヴァンシェフ50gを取り出し、継いでいきます。材料を全て合わせてよく攪拌します。しっかりと混ぜ合わせたら28℃で3時間保管し、その後、冷蔵庫でひと晩、休ませます。

3時間加温後生地は3〜4倍近くに膨らみます。

長時間保存した発酵種の表面は酸素に触れて乾燥しています。酸化しているとともに、雑菌が増えやすく、酵母や乳酸菌が弱っているので取り除いて破棄します。


 4日目

完成!


 リフレッシュ

完成後も1〜2日おきにリフレッシュしながら継ぎつづけることができます。

・ルヴァンシェフ 50g
・準強力粉 59g
・水 41g

容器の底の方からルヴァンシェフ50gを取り出し、リフレッシュしていきます。材料を全て合わせてよく攪拌します。しっかりと混ぜ合わせたら28℃で3時間保管し、その後、冷蔵庫でひと晩、休ませます。

3時間加温後生地は3倍前後に膨らみます。

長時間保存した発酵種の表面は酸素に触れて乾燥しています。酸化しているとともに、雑菌が増えやすく、酵母や乳酸菌が弱っているので取り除いて破棄します。

リフレッシュの際に取り除く100gの発酵種は、パン生地や酵母スイーツ、お好み焼き、パンケーキなど、何にでも使用できます。もったいないので、何らかの方法で使ってあげてください。

■ルヴァンシェフ(デュール)

ルヴァンとは?

「Levain」ルヴァンというのはフランス語で発酵種、酵母のこと。主にライ麦などの野生酵母を育てて、リキッドや元種として、パンを焼くのに利用するものです。イーストのような単一酵母ではなく複合酵母なので、各家庭やお店ごとに風味が異なります。加えるだけでパンがグッとおいしくなります。

嘘みたいな本当の話です。

中でもルヴァンシェフ(デュール)は粉量に対して水分量50〜70%の発酵種のことを指します。ルヴァンリキッドとの大きな違いは、つまり種の固さです。ルヴァンシェフ(デュール)はパン生地そのもののような固さで、ルヴァンリキッドは液体状のゆるゆるのものです。

私はどちらも育てています。ルヴァンシェフはTA170、ルヴァンリキッドはTA210です。どちらにもメリットがあり、また使いにくいところがあります。


 ルヴァンシェフ(デュール)のメリット

  • 旨味と酸味、複雑な香りのバランスが良い
  • パン生地の老化を遅らせることができる
  • リフレッシュを繰り返すことで長く育てることができるのでオリジナルの味わいが生み出せる
  • フランスの伝統的な製パンを踏襲できる
  • ルヴァンリキッドより発酵力が高い
  • TA170は一般的なパン生地と同等の加水レベルなので外割で使用しやすい


オレンジ色のところはルヴァンリキッドとの比較です


 ルヴァンシェフ(デュール)のデメリット

  • 生地がべたつきやすい
  • 製パンに時間がかかる
  • 生地に高さが出にくい、ふわっとしにくい
  • 管理に手間がかかる
  • 固めの発酵種なので、ルヴァンリキッドに比べて生地に混合しにくい
  • 固めの発酵種なので、リフレッシュの際に混合しにくい
  • ルヴァンリキッドより発酵種に酸味が出やすい


オレンジ色のところはルヴァンリキッドとの比較です

■親種とは?

これ、私も曖昧なので、調べている過程の知識をメモとして載せておきます。

発酵種を起こしたものを初種と言ったりします。それを親種にして、より発酵力の強い安定した仕上げ種を完成させるときなどに使う言葉、「親種」がルヴァンシェフのことですね。

さて、ルヴァンのようなサワー種はずっと維持し続ける発酵種なので、ルヴァンシェフも当然、冷蔵庫で熟成させた種になります。継ぎ方にもよりますが、微生物が活発な種をそのまま製パンに使うと、種の個性が強く出すぎたり、発酵力が安定しなかったりします。より発酵力を高くし、発酵種の特徴である酸味や香りの癖を和らげたものをパン生地に使用したい場合は、段階をふんでルヴァンの状態を整える方法があります。それが返り種(ラフレイシ)仕上げ種(ルヴァン・トゥ・ポワン)です。

 返り種(ラフレイシ)仕上げ種(ルヴァン・トゥ・ポワン)

親種から返り種を作って、仕上げ種を作る場合、2回種継ぎをするので2段階法と言うようです。どんな酵母でも、よりパンに使いやすい種に仕上げようとする場合、このように2段階、3段階……と継ぐことで、種の癖が弱まり、発酵活性が上がります。

ここからは私の個人的なイメージ↓。

この2段階法の場合、イメージとしては、1段階目で元となる親種を薄めて微生物(酵母・細菌・カビ←ただカビはこの時点ではほぼ優位を失っているので、生き残れないと思います)を活性化させて、2段階目で純度を高めるイメージです。具体的には、1段階目のフィードで5倍くらいの餌を与えて、2段階目のフィードでは2倍くらいの餌にとどめる、と言う感じでしょうか?

種の中は常に陣取り合戦。1段階目、前種の5倍の餌を与えれば、種の中の微生物の濃度は薄まります。薄まったら陣取り合戦の始まりです。ここでぐーんと微生物を活性化させてあげます。みんなもりもり頑張ります。そしてより優位な微生物が元気になり、増えるわけです。これが「返り種」。そして2段階目、1段階目ほど種の中の微生物の濃度を薄めずにフィードしてあげることで、前段階で優位になった種を安定させるっていう感じでしょうか。これが「仕上げ種」です。

いずれにしてもこの「返り種」「仕上げ種」の場合、スクリーニングとは違うので、捨て種は出ません。パンに使用する種の量をイメージして、1段階目を仕込みます。なので家庭用量でこの2段階法をするのは結構難しいです。前種をどんなに少量に抑えても、その5倍、さらにその2倍……と量が増えていってしまうので(しかもそこに水の量も加わるので大量になるのです💦)。なのであまり現実的ではないかなあ、と思います。

それに、私はルヴァンシェフ(デュール)を1日おきにリフレッシュしているので、酸味などの癖や発酵力に不満を持つことがありません。なので仕上げ種まで仕上げる必要はあまり感じないんですが、多加水の難しい生地やコールドプルーフのような、パンチを入れられずに長時間の発酵を必要とする生地の場合は、発酵と分解のバランスを取るためにも、仕上げ種を作ってあげる必要があるかもしれません。

ルヴァンはpH4.3以下のものを指すので、私のルヴァンはちょっと酸味が甘い可能性があります。調べてないのでなんとも言えないのですが。

ルヴァンは長く育ててみると、「乳酸菌優勢でしっかり酸味が乗っているな」とか「甘い香りが強くてよくブクブクしているからルヴァンだけで発酵がとれそうだな」とか、なんとなくお世話の仕方で種の状態が見えるようになってきます。長く育てて、自分好みのルヴァンを相棒にしてみてください。

■参考書

志賀勝栄著(2007)『酵母から考えるパンづくり』柴田書店

志賀勝栄著(2014)『パンの世界 基本から最前線まで』講談社選書メチエ

■材料

 ライ麦全粒粉

ライ麦全粒粉は新鮮なものを使用してください。ご使用になる粉に有用成分が残っているかどうかというのが何よりも重要です。購入したて、開封したてが大切です。浄水がいいとか気温が、湿度が、というよりも、最も重要なのはこれなんじゃないかな、と思っています。

 準強力粉

国産で、最も手に入れやすく、添加物も入っていない準強力粉です。バランスのいい粉だと思います。なんでもこれで済ませます。準強力粉の優等生。

 モルトシロップ

なければ入れなくても構いません。私も使用するのはルヴァンリキッドの種起こしの2日目までです。後は全く入れません。たまに1週間くらい留守にしたあとに使ったりします。それだけです。

■道具

 ヨーグルトメーカー

室温28℃の初夏から夏にかけては必要ないかもしれません。でもそれ以外では必須です。発酵機や冷温庫、ドゥコンディショナー(は流石にご家庭にはないかと思いますが)などがあればそちらをご利用ください。そうでない方はヨーグルトメーカーをご検討ください。

中でも私のイチオシはこれ↓です!

温度が1℃刻みで25〜65℃まで細かく設定でき、時間も48時間まで設定できます。容量1000mlは酵母起こしに充分ですし、容器が口の広いキューブ型(牛乳パックのような細長ではない)だというのも、酵母をしっかりと混ぜやすく、種継ぎでスクープを入れやすくて、ポイント高いです。

何よりこちらのヨーグルトメーカーには野田琺瑯のホワイトシリーズ(スクエア・L)が代用容器としてぴったりフィットするのです。

琺瑯は清潔に保ちやすく、酵母起こしにぴったり。こちらの琺瑯容器は、琺瑯製の蓋とシール蓋と選べるのですが、ヨーグルトメーカーに入れて加温する際は琺瑯の蓋を合わせています。

琺瑯の蓋は、容器の上にちょっとひっかけてのせているだけなので、冷蔵庫に入れる場合に不安定だと思う方はシール蓋を。私は冷蔵保存の際はシール蓋に付け替えてます。

自信を持っておすすめします!(野田琺瑯の容器の使用については、自己責任でお願いします)