オーバーナイト法で焼こう!
基本のバゲット生地(ハード系生地)で簡単【クッペ】の作り方。
クッペとは?
フランスの伝統的なパンのひとつ。バゲットと同じ生地で焼くラグビーボールみたいな可愛いハードパンです。1本クープがパックリ入っています。「クッペ」はフランス語で「切られた」という意味なんですね。
あまりこねないし、1本クープだし、練習するのにちょうどいいパンです。
……ということで作ってみました。
皆さんもぜひトライ!(笑)
一般的なバゲット生地にはモルトが使用されています。酵母が働くために必要な糖分です。でもモルトって普通のご家庭にはないものです。そんなときははちみつの出番です。はちみつはモルトシロップと同じように酵母の即時的な餌になるので、モルトの代用にぴったりなのです。
■クッペの作り方
■材料
——2個分
・準強力粉 154g(70)
・薄力粉 20g(44)
・グリストミル 22g(10)
・塩 4.8g(2.2)
・ルヴァンリキッド 44g(20)
・水 126g(60)
・はちみつ 4.4g(2)
・インスタントドライイースト 0.6g(–)
*焼成
予熱300℃
焼成300℃で7分(スチーム)、230℃で15〜20分
グリストミル(石臼挽き粉)はなんとなく風味が良いような気がして入れていますが、なければ普通の準強力粉を追加してください。
インスタントドライイーストはサフ赤です。
オーブンの癖等で焼成温度や時間はかなり変わってきますので、それぞれ調整してください。
ルヴァンリキッドがない場合
・準強力粉 154g(70)
・薄力粉 44g(20)
・グリストミル 22g(10)
・塩 4.8g(2.2)
・水 154g(70)
・はちみつ 4.4g(2)
・インスタントドライイースト 0.6g(—)
イーストの量は変えなくても大丈夫だと思います。少し発酵時間が伸びるかもしれません。心配な方は0.8gまで増やしてみてください。
■作り方
タイムテーブル
計量・下準備(5分)
↓
ミキシング(1分)
↓
オートリーズ(20分)
↓
ニーディング(1分)
↓
予備発酵 / 一次発酵(20分)
↓
折りたたみ(1分)
↓
予備発酵 / 一次発酵(20分)
↓
折りたたみ(1分)
↓
予備発酵 / 一次発酵(45分)
↓
オーバーナイト発酵(20時間)
↓
分割・折りたたみ(1分)
↓
ベンチタイム(15分)
↓
成形(5分)
↓
最終発酵 / 2次発酵(40分)
↓
焼成(25分)
タイムテーブルはあくまでも目安です。要所、要所で、生地の温度や質感を見極めてください。ベテランさんはもっと短時間に効率よく仕上げられるかもしれません。生地の様子を見極めるポイントは、下記で示していますので、参考になさってください。
下準備
イースト液の準備をします

水、インスタントドライイースト、はちみつを合わせてよく混ぜます。
粉類の準備をします

準強力粉、グリストミル、薄力粉、塩を合わせてボウルに入れ、軽く混ぜます。
工程
ここでは上記のタイムテーブルに沿って、具体的な工程やポイントを確認しながらパンを焼いていきます。
1

粉類が入ったボウルにルヴァンリキッドを加えます。ルヴァンリキッド目掛けてイースト液を注ぎ、ルヴァンリキッドを溶かしてから全体を軽く混ぜ合わせます。
塩
いつもは後入れする塩ですが、今回ははじめに入れてしまいます。ハード系のパン生地はあまりこねたくない生地なので、後入れでこねすぎになるのを避けるためです。

粉気がなくなったら、20分ほど生地を休ませます。
オートリーズ
粉に水分を十分に吸わせ、小麦粉の中のグルテンをある程度育てて、生地の伸びをよくするのに役立ちます。こねの時間を短縮できたり、生地への負荷を減らすことにもなります。乾燥は厳禁です。
今回はバゲットなので特に加温はしません。
こねあげ温度
23℃
2

ボウルの端から、生地とボウルの間に指を入れ、生地のはじを引っぱって切れない程度に伸ばします。

伸ばした先は生地の中心に向かって折りたたみます。ボウルの円周に沿って1〜2周くらい繰り返し行います。
パン作りの「こね」の作業の代わりです。バゲットのこね方には色々あります。数あるこね方のうちのひとつです。お好みの方法がある場合はお好みの方法でどうぞ。いずれにしても、白パンや食パンといった生地を作るときのようにこすりつけて力を加えて伸ばすのではなく、生地の力に合わせて伸ばしてたたむ、を意識するといいかと思います。
指先は水に濡らして、生地がくっつくのを予防します。生地をちぎってしまったり、必要以上に伸ばしてしまったりすると、脆く繋がりはじめたグルテンが傷んでしまいます。

一通り作業を終えたら、綴じ目を下にして20分ほど生地を休ませ、予備発酵させます。
3

生地の真ん中を持ち上げて軽く伸ばし、余った上下の部分を下に折りたたんで三つ折りにします。左右も同じように三つ折りにします。生地を上下、左右にそれぞれ1回ずつ三つ折りにする、ということです。20分ほど生地を休ませ、予備発酵させます。
4

同じ工程をもう1度。生地の真ん中を持ち上げて軽く伸ばし、余った上下の部分をしたに折りたたんで三つ折りにします。左右も同じように三つ折りにします。生地が1.5倍になるまで予備発酵/一次発酵させます。
予備発酵(1次発酵)
オーバーナイト発酵の前に、イーストを活性化させてあげるイメージです。冷蔵庫に入れる前に、しっかりと生地を育てておきます。

5

平たい容器に広げてラップを密着させて、生地が1.5〜2倍に膨らむまでオーバーナイト発酵させます。
オーバーナイト発酵
オーバーナイト発酵(低温長時間発酵)は、やり方は様々ですが、多くは10〜22℃くらいで、10時間保存、24時間保存、などというように指南されている講師さんや書籍が多いかと思います。これって家庭ではかなり難しいです。ですから家庭で行うオーバーナイト発酵は、冷蔵庫の野菜室5〜8℃を使用します。4℃以下の冷蔵庫内ですと酵母はほとんど働けないので、野菜室に入れる訳です。
野菜室ではなく普通の冷蔵庫内で熟成させることもできます。この場合はもっと時間がかかりますし、いくつかの工夫が必要です(イーストを増やしたり、復温時間を長めに取ったりなどなど)。
発酵速度というか、発酵の勢いみたいなものは、生地を冷蔵庫に入れる前の予備発酵や、生地保存中の温度や湿度の他、生地に加えるイーストの量や加水量、糖分、酸素の量や生地の酸度などでも変わってきます。それらを工夫すれば、発酵速度はある程度コントロールすることが可能です。これらをコントロールして、最も適したやり方を探すトライアンドエラーが、オーバーナイト発酵と付き合っていくためには必要かもしれません。

6

生地をこね台に出して、やさしく薄く広げます。生地温度は冷たいままで2分割します。

折りたたんで、乾燥を防ぐために濡れ布巾などで覆って、15分休ませます。
普段は生地温度が15℃前後以上に戻るのを目安にしていますが、今回は復温は取りません。代わりに冷蔵発酵で生地を最低でも1.5倍まで膨らませてください。あまり生地温度をあげたくないので、冷たいまま成形しています。
ベンチタイム
ベンチタイムも短めです。生地が緩んだらすぐに成形に入ります。
7
生地を成形します。



布とり(なければオーブンシートなどで左右に支えをしても◎)をして、最終発酵/二次発酵させます。



生地が全体的にふっくらとひと回り膨らむことを目安にしています。
8

生地をオーブンシートに移します。

クープを入れます。
↑実はこの後「クープが浅すぎたかな……」と思って二度引きしたせいで、仕上がりのエッジが割れてます。格好悪いです。クープは思い切ってざっと切ってしまいましょう!
9
焼成します。

■ポイントとコツ
クッペってなに?
フランスの伝統的なパンです。フランスで親しまれているパンは3種類に分類することができます。「パン・トラディショネル」「ヴィエノワズリー」「パン・スペシオ」。詳細は別のページで語るとして、私たちがよく使用するバゲットという言葉、このバゲットというのは「パン・トラディショネル」の代表格のパンです。このバゲット生地を成形を変えて焼き上げて、バゲット、パリジャン、フィセル、クッペ……などと呼び分けているのですね。
バゲットはよく見かけるいわゆるフランスパンの形に成形したものです。こちらは木琴堂チャンネルでご紹介したバゲットの作り方です。家庭のオーブンでも焼けるように小さいサイズになっています。
その昔、フランスではパンの価格をグラムで決めて、はっきりと制度化したのだそうです。パリジャンの生地量なら〇〇円、バゲットの生地量なら〇〇円、というふうに。実際はお店でパンの重さを計ることはなく、目安となったのはクープの数。だからパリジャンは5本クープ、バゲットは7本クープ、となんとなくどこのお店に行っても同じような形のフランスパンに出会うのですね。でも今は自由みたいです。だから家で作った小さめのバゲットをバゲットと呼んでもいいのだと思います!
今回作ったのは、クッペ。「切られた」という意味のクープ1本のパンです。

幅広の成型なので内層の白いところが多め。柔らかめのパン好きな日本人の舌には合っているのではないでしょうか。クッペをもとにコッペパンが生まれたって説もあるみたいですよ。確かに音の響きが似てますね!
ハードパンの生地のこね方

こね方って色々あるので、数ある中のひとつとしてご覧ください。粉の風味を深く感じたい生地の場合はあまりこねません。こちらのバゲットはまさにそんな生地です。このレシピではさらに発酵種(ルヴァンリキッド)で複雑な風味を追加して、生地の旨味を味わいます。できるだけ触りたくない生地なのですが、仕上がるパンの香りと内層の口どけのために軽く生地を鍛える作業を入れています。この口どけはリーンな生地の美味しさの第二のポイントです。グルテンをより柔軟にして、香りをたくさん閉じ込めてあげることができる生地を作る一方で、ほどほどに切れやすい強化にとどめて、焼成時にまばらにグルテンが壊れる生地を作ります。この作業で生地にポコポコした気泡が入り、焼き上がりの内層が、軽い口どけのものになるのですね。
折りたたみ作業のやり方はたくさんあります。これは一例です。英語圏のレシピサイトを漁って見つけてきました。「トラディショナルなやり方」として紹介されていました。生地の真ん中を引っ張り上げて、下にたたんでいくやり方です。

逆でもまったく問題ありません。生地の上下(あるいは左右)をやさしく伸ばして上にたたんでいく方法ですね。他にも生地を作る初期の段階で、生地を薄ーく伸ばしてたたんでいく方法(ラミネーション)なんかもあります。いずれの場合も、お水をたっぷり使ってあげてください。くりかえしの折りたたみ作業でも生地が傷みません。
ルヴァンリキッドってなに?
「Levain」ルヴァンというのはフランス語で発酵種、酵母のこと。主にライ麦などの野生酵母を育てて、リキッドや元種として、パンを焼くのに利用するものです。
詳しくはこちら「ライ麦ルヴァンリキッドの起こし方」をご覧ください。
バゲットやフォカッチャのように副材料の少ないリーンな生地の場合は、今回のように発酵種を加えたり、低温長時間発酵で小麦の芳香を深めてあげることで、生地が生まれ変わったようにおいしくなります。お試しください。
■材料
粉類
準強力粉はE65という粉を使っています。その他によく使うのは「ラ・トラディション・フランセーズ」。タイプERも載せておきます。
薄力粉はいつもドルチェです。
強力粉と薄力粉で準強力粉に近い粉を配合する場合は、こちらの強力粉をおすすめします。キタノカオリとスーパーノヴァです。キタノカオリは特におすすめです。大好きな小麦です。
インスタントドライイースト
最近ドライイーストとかイーストとか言わないように気をつけようと心に決めました(笑)。インスタントドライイーストは、サフ赤を使用しています。
こちらは冷凍して保存しています。特に凍って固まったりしないので、そのまま必要量だけすくいだして使います。
■道具
ボウルと計量カップ
こねるときはガラスボウル。発酵の具合も全方向から確かめられます。経年劣化の濁りみたいなものも出にくいと思うので、長く使えるのではないでしょうか。私はiwakiのガラスボウルを使用しています。
こんなのもあるんですね。かっこいいな。次はこれが欲しいです。
本当はHarioも気になっているけど……。
計量カップは無印良品。こちらもガラス製です。品の良い感じでメモリが付いているのでお気に入り。それにやっぱりガラスの手触りが好きです。その前はHarioのものを使用していました。
野田琺瑯のバット
オーバーナイト発酵で使用しているのは野田琺瑯のバット(アイボリー)です。ホワイトシリーズよりも好きです。温かみがありますよ。
よく使用しているサイズは21枚取りです。他にキャビネサイズと15枚取りを愛用しています。キャビネサイズのリンクが見つかりません。探しておきますね。
スケール
パン作りに欠かせないのはスケール。3kgまで、0.1g単位で計ることができるものをおすすめします。私が使用しているのはタニタのスケールです。
■あったらいいなと思うもの
パンマットとクープナイフ
パンマットはあってもいいかもしれません。手作りもできます。キャンバス地の四隅を裁ち目かがりするだけでとても簡単なので、ミシンをお持ちなら是非。こちらはおすすめが思い当たらないです。
クープナイフは剃刀ホルダーと剃刀の組み合わせや、小さめのよく切れるナイフをお勧めします。
今回使用したのはビクトリノックスです。ビクトリノックスからはいろんな種類のナイフが出ているので、ご家庭で活躍しそうなものを選んでください。クープだけだともったいないので。ビクトリノックスは恐ろしく切れ味がいいので、バゲットを切るときにも大活躍間違いなしです。
赤も可愛い。私のはこれの黒です。