オーバーナイト発酵で焼く【パン・ヴィエノワ】の作り方。
パン・ヴィエノワとは?
華やかなクープが美しい細長のサンドイッチパンです。本来の長さは60cmもあるみたい。ウィーン風のパン、という意味だそうです。1840年のこと、パリにやってきたオーストリアの大使館員が、街のパン屋さんに祖国のパンを再現させたことが始まりだとか。バゲットの原型だとも言われています。
ヴィエノワのレシピは、元はシンプルな材料で作られたレシピだったようですが、現代ではわりとリッチな配合に変化しつつあります。一次発酵をとらないレシピも紹介されていたりするので、ライフスタイルに合わせたパン作りが楽しめそうです。
私はやっぱり少しのイーストとはちみつで作ってみたかったので、オーバーナイト法を選びました。そしてこちらも木琴堂チャンネルではお馴染みですが、カルピスで仕込んであります。もともとの目的は生地を少し酸性に傾けることにあったのですが、今回の生地は水仕込みですし、カルピスは乳製品の旨味も加えることができるのでぜひ使用してください。
ルヴァンリキッドはお好みでどうぞ。入れない場合の配合も下記に残しておきますね。
木琴堂のヴィエノワはたっぷりのバターを仕上げに(グルテンがしっかり繋がってから)入れるので、かなりさくっとします。歯切れの良い食感とバターの香りを楽しんでください。
■YouTube
■材料
—-6本分
パン生地
・強力粉 200g(80)
・薄力粉 50g(20)
・ルヴァンリキッド 40g(16)
・卵黄+水 130g(52)
・はちみつ 25g(10)
・カルピス 12g(5)
・インスタントドライイースト 1g
・塩 4.5g(1.8)
・バター 25g(10)
ドリュール
・卵白
・インスタントコーヒー
・水
焼成
予熱250℃
焼成210℃で13〜15分
インスタントドライイーストは金サフです。
オーブンの癖等で焼成温度や時間はかなり変わってきますので、それぞれ調整してください。
ルヴァンリキッドを加えないレシピ
・強力粉 200g(80)
・薄力粉 50g(20)
・卵黄+水 135g(54)
・はちみつ 25g(10)
・カルピス 12g(5)
・インスタントドライイースト 1g
・塩 4.5g(1.8)
・バター 25g(10)
イーストの量は変えなくても大丈夫だと思います。少し発酵時間が伸びるかもしれませんが。少しだけのんびり待ってみてください。
■練乳バタークリームの作り方
材料
・卵白 60g
・グラニュー糖① 16g
・水 22g
・グラニュー糖② 66g
・バター 160g
・練乳 60g
作り方
1
卵白を軽く泡だててコシを切ります。グラニュー糖①を加えて角が立つまで泡だて、メレンゲを作ります。
2
鍋に水とグラニュー糖②を入れて118℃まで温め、シロップを作ります。
3
メレンゲにシロップを加えながらさらに泡だてます。メレンゲ生地に艶が出て、熱が取れるまで泡だてつづけて、イタリアンメレンゲを作ります。
4
別のボウルに常温に戻したバターを入れて空気を抱き込ませて泡だてます。バターが白っぽくなったら練乳を加えてよく混ぜ、そこにイタリアンメレンゲを5回に分けて加え、その都度、よく泡だてます。
5
完成!


■作り方
フローチャート
パン作りの流れをざっとさらいます。おおよその時間割です。ここでの時間割は手ごねで作る場合のものです。ニーダーやスタンドミキサーを使用される場合は、生地の状態を確認しながら作ってください。油脂は少し早めに入れてあげてください。
計量・下準備(5分)
↓
ミキシング(3分)
↓
オートリーズ(30分)
↓
塩入れ+ニーディング(12分)
↓
油脂入れ+ニーディング(8分)
↓
予備発酵 / 1次発酵
↓
オーバーナイト発酵
↓
復温
↓
分割・丸め直し(5分)
↓
ベンチタイム(30分)
↓
成形+仕上げ(5分)
↓
最終発酵 / 2次発酵↓仕上げ(1分)
↓
焼成(15分)
パン・ヴィエノワの生地管理
こねあげ温度
25〜27℃
予備発酵(一次発酵/フロアタイム)
25〜28℃、湿度70%以上、1時間前後
最終発酵(二次発酵/ホイロ)
30℃、湿度70%以上、1時間前後
あくまでも目安です。要所、要所で、生地の温度や質感を見極めてください。
■工程
上記のフローチャートに沿って、具体的な工程やポイントを確認しながらパンを焼いていきます。
下準備
イースト液の準備をします

卵黄、水、はちみつ、カルピス、インスタントドライイーストを合わせてよく混ぜます。
水温
生地によりますが、水分の温度は25〜35℃(夏場の室温が高すぎる場合は冷水、冬場の室温が極端に低い場合や機械でこねる場合は40℃強まで)の範囲で調整します。*15℃以下の冷水を使用する場合はインスタントドライイーストは粉類の方に混ぜてあげてくださいね。
1

イースト液に粉類を加えます。さらにルヴァンリキッドを加え、ひとかたまりになるまで混ぜます。

粉っぽさがなくなるまで混ぜたら、生地を30分ほど休ませます(オートリーズ)。
オートリーズ
粉に水分を十分に吸わせ、小麦粉の中のグルテンをある程度育てて、生地の伸びをよくするのに役立ちます。こねの時間を短縮できたり、生地への負荷を減らすことにもなります。乾燥は厳禁です。生地温度が下がりやすいので、温度管理に気を配ってください。
2

塩を加えてこねます。塩の粒が消えて、だんだん表面がつるんとしてきます。薄膜が張るくらいまでしっかりとこねます。
塩
本来は少しこねたのちに塩を加えるのが理想です。塩を加えると生地が締まりますし、粉の水和やグルテンの形成を邪魔するようです。その前にしっかりとこねて生地を育てておきたいものです。ただ、ここではオートリーズを充分にとっていますし、家庭製パンではそこまでデリケートに考える必要はないと思うので、手順を1つ減らすつもりで、ここで塩を加えています。
3

バターを加えてこねます。
今回のように油脂量が多い場合は、生地が完全にこねあがってしまう前に油脂を混ぜ込む方がより良いと思います。……が、このレシピではヴィエノワをかじったときのバターの香りと食感の歯切れの良さのために、最後にバターを加える方法を選びました。
油脂をグルテンの隙間に均等に入れこむのには少し時間がかかります。繋がってきたグルテンはちぎると傷んでしまうので、無理に伸ばしすぎてちぎったりしないように心がけます。その際、生地をある程度細かく切って揉み込むと油脂が入りやすいです。可塑性のある油脂も、液体油脂も同様です。液体油脂の方が少し入りにくいですが、10%未満の配合量で手ごねの場合はきちんと入りますので(今回はギリギリ10%ですが)、丁寧に揉みこんで吸収させてあげてください。
生地が油脂を満遍なく吸って、はじめツルツルして台離れの良かった状態から、再びしっとりと手のひらやこね台にはりつくような感触になったら、こねあがりです。
こねあげ温度
25〜27℃
4

生地が1.5倍になるまで予備発酵(一次発酵 / フロアタイム)をとります。
温度25〜28℃/湿度70%以上
目安は1時間前後

ヴィエノワは発酵をとらない製法もありますが、今回は1.5倍くらいまで発酵させます。
5
冷蔵庫に入れてオーバーナイト発酵させます。
ヴィエノワは一次発酵をとらないレシピも多数ありますが、ここで生地をゆっくり熟成させることで、小麦の水和が進み、小麦そのものの旨味や、酵母や乳酸菌の発酵生成物が追加されます。8時間〜を目安に寝かせてみてください。
6


生地を冷蔵庫から出して復温させます。復温が済んだら生地を6分割し、ベンチタイムをとります。

復温
生地を室温近くに戻しながら、ゆるやかに酵母を活性化させてあげることです。温度が上がっていくのと、生地をこね台に出すことで軽いガス抜きになるので、新しい酸素が供給され、この間も発酵は進みます。冷たすぎると生地は伸びが悪かったりして傷みやすいので、軽く緩めてあげる意味もあると思います。
生地温度は15℃前後以上に戻るのを目安にしていますが、生地の状態によって対応は変わってきます。冷蔵庫での発酵が思うように進まなかった場合は、ここで時間調整をします。生地の膨らみが足りなければ復温時間を長めに、生地が冷蔵発酵中に2倍近くまで膨らんでいれば、過発酵になってしまうのですぐに分割・丸め直しに入ります。
今回は生地の水分も低く、冷蔵中にはひとまわりふっくらする程度だと思います。復温でしっかりと生地を追加発酵させてあげてください。
ベンチタイム
生地は力を加えると締まります。締まった生地を無理に成形すると傷んでしまうので、生地を休めて緩めてあげるためにベンチタイムをとります。成形が簡単な場合は20分ほどでも充分ですし、成形が複雑で生地に負担をかけやすい場合は30分しっかりと休めてください。
今回は20〜25cmに伸ばします。しっかり目に麺棒をかけるので、ベンチタイムは30分取ってください。
7

生地を成形します。
8


生地の表面にドリュールをしてクープを入れます。
9

生地がひと回り大きくなり、全体的にふっくらとするまで、二次発酵(最終発酵/ホイロ)を取ります。
温度30℃/湿度70%以上
目安1時間
10
お好みで再び生地の表面にドリュールをしてから焼成します。

■パン・ヴィエノワとは?
華やかなクープが美しい細長のサンドイッチパンです。本来の長さは60cmもあるみたい。今ではいろんな長さのものを見かけます。
ヴィエノワというのはウィーン風のパン、という意味だそうです。1840年のこと、パリにやってきたオーストリアの大使館員が、街のパン屋さんに祖国のパンを再現させたことが始まりだとか。ハンガリーの上質な小麦粉で焼かれた内層の白いパンというのが、当時のパリではたいへん珍しかったようです。バゲットの原型だとも言われています。
フランスではパンとヴィエノワズリー(ウィーン風菓子パン)とを分けて考えますが、ヴィエノワはヴィエノワズリーの方です。伝統的な製法を守ったパントラディショネル、ライ麦を配合した昔ながらのパンスペシオ、「それらと、ウィーンからやってきた菓子パン、ヴィエノワズリーは別のもの」という考え方をするところにフランス人のプライドを感じます。
菓子パン、ヴィエノワの配合を見ればまさに菓子パンですが、昔はもっとシンプルな材料で作られていたようです。今では油脂や牛乳をたっぷり配合して、ブリオッシュほどではないですがリッチな生地で作られるものが主流になりました。
ヴィエノワは発酵をとらないレシピもとても人気があります。この場合のメリットは美しいクープが入れやすいところ。クープナイフもスッと入りますし、見た目の美しさを重視するならこちらのレシピも魅力的です。
ただ、やはり小麦本来の甘みや、酵母や乳酸菌が生み出す風味や香りは捨てがたいですよね。……ということで今回も冷蔵庫でじっくりと寝かせてみました。
でもデメリットもあります。発酵させると生地の扱いが少し難しくなることです。特にクープが。加水を減らしてみたり、水を牛乳に置き換えたりもしてみたのですが、好みの食感にならなかったので、味わいや風味を重視するならやっぱり水仕込みで。加水もギリギリのこの低さで。ぜひ作ってみてください。加水はこれ以上下げると、口どけが悪くなるような気がします。
クープナイフでクープを入れるのが難しいようでしたら、ハサミでチョキチョキしてみてください。これくらいの水分量の生地でしたら、見た目もあまり変わりません。これ以上、水分が少なくなるとハサミの跡が残りやすいのでお気をつけください。

■ドリュール
パンの照りを出すときに、皆さんは何をぬっていますか?
全卵、卵黄、卵白、牛乳、豆乳、溶かしバター……いろいろあると思うんですが、私は冷蔵庫内のあまりものを使用します。今回は度重なる試作で卵白がたくさんあったので、卵白にしました。
卵白はクリアな照り出しに重宝します。卵黄は照り+色づきに貢献しますし、ミルク系はメイラード反応が良く出るようで、色づきをよくしたいときにいいみたいです。溶かしバターは焼成後にぬります。照りも香りもアップします。でもコストが高く付きます。
卵白が余っていて、さらに色づきもよくしたいときはインスタントコーヒー、おすすめです。香ばしく、こんがりとしますが、コーヒーの香りは残りません。ぜひやってみてね。
■ルヴァンリキッドとは?
「Levain」ルヴァンというのはフランス語で発酵種、酵母のこと。主にライ麦などの野生酵母を育てて、リキッドや元種として、パンを焼くのに利用するものです。
詳しくはこちら「ライ麦ルヴァンリキッドの起こし方」をご覧ください。
少量ですが、自家製酵母の発酵種を入れることで生地に旨味が加わります。また、生地のpHを少し酸性に傾けてくれるので、発酵が安定します。おすすめです。
■いつもの決まりごと
オーバーナイト法の生地
冷蔵庫から出したての生地はきちんと発酵していても冷たいままです。そのまま乾燥を防ぎながら、10℃〜15℃にまで生地温度が戻って、さらに生地が期待する大きさに膨らんでくるのを待ちます。これが復温です。
このとき、発酵に利用した容器のまま復温させる場合は、生地の見極めがしやすいです。温度は測ってチェックできますし、大きさは膨らみを目視できます。ただ、この場合、容器が冷たいままですし、生地も広がっていないので復温に時間がかかるとともに、生地の発酵状態にムラが出やすいです。
慣れてきたら、生地をこね台に出して復温させてみてください。優しくパンチを入れて新しい呼吸を促してあげるとともに、そのまま乾燥を防ぎながら10℃〜15℃にまで生地温度が戻って、また全体的にふっくらとしてくるのを待ちます。発酵倍率を確認しにくいんですが、何度か作って慣れてみてください。
オーバーナイト発酵で生地がうまく膨らまない場合
冷蔵庫内の温度が低すぎたり、予備発酵(一次発酵・フロアタイム)が短すぎたりして、生地が充分に膨らんでいなかった場合は、この復温の工程で発酵具合を調節します。
復温時間は室温にもよりますが、1〜2時間ほどかかることもあります。だから早めに生地を冷蔵庫から出して、その間は別の家事を……というように、ご自身の日常生活のもろもろのお仕事と平行でパン作りを行うのがベストです。
オーバーナイト法の利点は、ある程度の「ほったらかし」が許されるところです。
■材料
強力粉と薄力粉
よく使う国産小麦は「キタノカオリ」。カナダ産は「スーパーノヴァ」。強力粉はほとんどこのうちのどちらかです。特にキタノカオリは大好きな小麦です。
薄力粉はいつもドルチェです。安定して手に入り、味も美味しいです。
インスタントドライイーストとバター
今回は、サフ金を使用していますが、サフ赤でも問題なく膨らみます。糖分が高い生地なので耐糖性のあるものを選んでいますが、以前、作り比べをしてみたら、このくらいの糖分は赤でも大丈夫でした。
こちらは冷凍して保存しています。特に凍って固まったりしないので、そのまま必要量だけすくいだして使います。
バターは高千穂バターを使用しました。高千穂バターおいしいです!!
カルピスバターもよく使用します。
■道具
ボウルと計量カップ
こねるときはガラスボウル。発酵の具合も全方向から確かめられます。経年劣化の濁りみたいなものも出にくいと思うので、長く使えるのではないでしょうか。私はiwakiのガラスボウルを使用しています。
こんなのもあるようで、次はこちらが欲しいです。
本当はHarioも気になっているけど……。
計量カップは無印良品。こちらもガラス製です。品の良い感じでメモリが付いているのでお気に入り。それにやっぱりガラスの手触りが好きです。その前はHarioを使用していました。
野田琺瑯のバット
オーバーナイト発酵で使用しているのは野田琺瑯のバット(アイボリー)です。ホワイトシリーズよりも好きです。温かみがありますよ。
よく使用しているサイズは21枚取りです。他にキャビネサイズと15枚取りを愛用しています。キャビネサイズのリンクが見つかりません。探しておきますね。
スケール
パン作りに欠かせないのはスケール。3kgまで、0.1g単位で計ることができるものをおすすめします。私が使用しているのはタニタのスケールです。
パン切りナイフ
グローバルのこれ。大きくて便利、どんなパンにも◎。
ビクトリノックスもいいですよね。ちょっと小さめですがこちらも愛用品。
