自家製酵母の【山食パン】

自家製酵母で焼く基本の食パン。
ワンローフの【山食パン】の作り方。

山食パンとは?

お馴染みの食パンを、パン型の蓋を開放して焼き上げたものです。対して蓋を閉めたまま焼き上げるものを角食パン(プルマンブレッド)と呼んで区別します。

もともとは生地の配合にも明確な違いがありました。山食パンとはシンプルな材料で縦の伸びを意識して作り、少し塩味が効いていて、トースト性が良くさっくりしているものを指していたようです。

今回ご紹介する山食パンではイーストを使用せず、ルヴァンリキッドだけで、ポーリッシュ法で仕込んでいきます。

ポーリッシュ法とは?

ポーリッシュ種と呼ばれる水種(液状の発酵種)を使用する製パン法です。材料の粉の一部に、それと同量の水(ベイカーズ%内)を合わせ、酵母を加えて事前に発酵させます。この発酵水種を、本ごねでその他の材料とともにこね合わせて生地を作り上げるメソッドです。生地の伸びや風味が良くなったり、発酵が安定するなどのメリットがあります。

詳しくは「ポーリッシュ法」のコラムをご覧ください。

ルヴァンリキッドを「水種」と呼ぶこともありますよ、というお話を以前「ライ麦ルヴァンリキッドの起こし方・作り方」のページでご紹介したと思います。そうです。ルヴァンリキッドってポーリッシュ種(水種)です。

ただ、普段の種つぎのやり方で、さらに2〜3日経ってしまったルヴァンリキッドだといくらか発酵力が頼りないので、前日に仕込み直します。イーストを併用するより若干時間がかかりますが、普段通りのルヴァンリキッドだけで1から発酵をとるよりも酸味もでにくいのでおすすめです。お試しください。

酵母の旨味がダイレクトに活きたパンになります。たいへん美味しいです。

■自家製酵母の山食パンの作り方 | YouTube

■材料
—-1斤

ポーリッシュ種

・ルヴァンリキッド 40g(16)
・強力粉 40g(16)
・水 40g(16)

本ごね

・強力粉 190g(76)
・スキムミルク 17g(7)
・水 115g(46)
・はちみつ 20g(8)
・塩 4.5g(1.8)
・発酵バター 20g(8)


*焼成
予熱 200℃
焼成 180℃で10分、160℃で15〜18分

オーブンの癖等で焼成温度や時間はかなり変わってきますので、それぞれ調整してください。

型容積 1,700g
型比容積 3.5

■作り方

フローチャート

パン作りの流れをざっとさらいます。おおよその時間割です。ここでの時間割は手ごねで作る場合のものです。ニーダーやスタンドミキサーを使用される場合は、生地の状態を確認しながら作ってください。油脂は少し早めに入れてあげてください。

1日目
ポーリッシュ種の仕込み


計量(3分)

ミキシング(1分)

発酵(3時間)

オーバーナイト発酵

2日目
本ごね


計量・下準備(5分)

ミキシング(1分)

オートリーズ(30分)

塩入れ・ニーディング(10分)

油脂入れ・ニーディング(8分)

予備発酵 / 一次発酵(20分)

折りたたみ(1分)

予備発酵 / 一次発酵

ガス抜き・丸め直し(1分)

ベンチタイム(20分)

成形(5分)

最終発酵 / 2次発酵

焼成(25分)

時間はあくまでも目安です。要所、要所で、生地の温度や質感を見極めてください。

■工程

上記のフローチャートに沿って、具体的な工程やポイントを確認しながらパンを焼いていきます。

前日の準備

ポーリッシュ種を作ります

1

ルヴァンリキッド、強力粉、水を合わせてよく混ぜます。

水温
生地によりますが、水分の温度は25〜35℃(夏場の室温が高すぎる場合は冷水、冬場の室温が極端に低い場合や機械でこねる場合は40℃強まで)の範囲で調整します。この生地の「混ぜあげ温度」は23〜24℃です。

2

28℃程度の室温で3時間〜発酵させます。

ポーリッシュ種ははじめは滑らかで、気泡も見られません。暖かいところで寝かせることで酵母が働き始めます。

生地は2倍〜3倍まで膨らみますが、自家製酵母の性質によるので、膨らみ方はまちまちです。2倍強〜3倍まで様子を見て、その後、冷蔵庫に入れます。翌日は復温させてから使用します。

ポーリッシュ種の詳細は「ポーリッシュ法」をご覧ください。

冷蔵庫に入れてひと晩、休ませます。

当日の準備

ポーリッシュ種を復温させます

ポーリッシュ種を冷蔵庫から出し、常温(もしくは28℃くらい)で復温させます。

生地は冷蔵庫で冷やされて少し量が減っています。室温において、再び表面がふっくらするのを待ちます。

気泡がやわらかくなって、揺らすとふるふると揺れて消えるくらいの頃に使用します。

粉類の準備をします

強力粉、スキムミルクを合わせてよく混ぜます。

スキムミルクはダマになりやすいので、必ずしっかりと混ぜてください。

1

ポーリッシュ種、水、はちみつを合わせて混ぜます。

水温
生地によりますが、水分の温度は25〜35℃(夏場の室温が高すぎる場合は冷水、冬場の室温が極端に低い場合や機械でこねる場合は40℃強まで)の範囲で調整します。この生地のこねあげ温度は25〜27℃です。

2

粉類を加えて混ぜます。粉気がなくなったら、30分ほど生地を休ませます。

3

塩を加えてこねます。

ポーリッシュ法の本ごねは低負荷でゆっくりとこねると伸びの良い生地ができるみたいです。念入りにすりごねをして、生地の表面がつるりとしてキメが整うまで続けます。生地はとろとろと手のひらにそって自在に変化するくらいにやわらかくなっているはずです。手のひらの温度と摩擦で、生地はほんのりと温かくなっていると思います。

4

油脂を加えてこねます。

油脂の混ぜ込み
油脂をグルテンの隙間に均等に入れこむのには少し時間がかかります。繋がってきたグルテンはちぎると傷んでしまうので、無理に伸ばしすぎてちぎったりしないように心がけます。その際、生地をある程度細かく切って揉み込むと油脂が入りやすいです。可塑性のある油脂も、液体油脂も同様です。液体油脂の方が少しなじみにくいですが、10%未満の配合量で手ごねの場合はきちんと入りますので、丁寧に揉みこんで吸収させてあげてください。

生地が油脂を満遍なく吸って、はじめツルツルして台離れの良かった状態から、再びしっとりと手のひらやこね台にはりつくような感触になったら、こねあがりです。

こねあげ温度
25〜27℃

5

20分、予備発酵(1次発酵)させます。

6

生地の伸びとコシを鍛えます。こね台に打ち粉ををふって、生地を出します。生地を引っぱって伸ばしながら上下に三つ折り、左右に三つ折り、その後、再び上下を下に折りたたむようにして生地の表面を丸く張らせて整えます。再び発酵容器に入れて、発酵させます。

7

生地が2倍になるまで発酵させます。横に広がる生地なので高さではなく全体的な大きさをみてください。

8

生地をこね台に出して薄く広げ、全体を優しく押してガス抜きをします。生地を上下左右から折りたたみ、底面を張らせるようにして丸め直します。綴じ目を下にして、乾燥を防ぐために濡れ布巾などで覆って、20分〜30分のベンチタイムをとります。

9

生地を成形し、満遍なく油脂を塗った型に入れます。生地が型の8分目までふくらむまで発酵させます。

10

焼成します。

焼き上がったら、腰折れを防ぐため、すぐに型を外側からがんがんとたたき、刺激を加えます。熱いうちに型から外し、ケーキクーラーなどの上で冷ましてください。粗熱が取れたらビニール袋などに入れて保存します。

■ポーリッシュ法とは

ポーリッシュ種と呼ばれる水種(液状の発酵種)を使用する製パン法です。材料の粉の一部に、それと同量の水(ベイカーズ%内)を合わせ、酵母を加えて事前に発酵させます。この発酵水種を、本ごねでその他の材料とともにこね合わせて生地を作り上げるメソッドです。

ポーリッシュ種は液状なので水和もスムーズで酵母もよく働きます。このおかげで小麦の酵素分解が進み、小麦本来の甘味や旨味をしっかりと引き出した生地を作ることができます。生地のpHは弱酸性、これは酵母が働きやすい環境なので、発酵も安定します。ポーリッシュ種を仕込むとき、生地をしっかり攪拌することでグルテンの骨格を壊しているので、食感は歯切れよくなります。さらに焼いてみると、生地に気泡が入りやすくなったり、窯伸びしやすくなったりします。

もともとは1840年、ポーランドの貴族によって開発された製パン法だそうです。その後、オーストリアからフランスに広まりました。ポーランド発祥だからポーリッシュなんですね。

合わせて「ポーリッシュ法」のコラムをご覧ください。

■ポーリッシュ種の使いどき

ポーリッシュ種の使いどきの見極めは書籍によっていろいろあります。

こんなことが言われています。

  • 生地が3倍になったら。
  • 生地がいちどピークに達してから少し種落ち(発酵種の表面が少し沈み始めること)したら。
  • 生地の表面にシワがよったら。
  • 気泡がフルフルになって揺らしたときにプツプツ割れるようになったら。
  • 種落ちしてから冷蔵庫に入れてひと晩、寝かせてから。
  • 種落ちする前に冷蔵庫に入れて翌日、再び表面がぶくぶくになったら。
  • 種落ちする前に冷蔵庫に入れて翌日、再び表面がぶくぶくになって、それから種落ちしてから。

……などなどなど。粉や酵母の種類によっても微妙に違いそうですし。加温時間の目安もイーストや酵母の添加量によって3〜15時間と幅があるようです。

使ってみた体感としては、生地が3倍くらいになって、気泡を揺らしたときにふつふつと消えるようになったら使用するか、あるいは生地が3倍になったら冷蔵庫に入れて、翌日復温させて使用する、というところで落ち着きました。あまり差が感じられなくて……。皆さんも実際に使って納得いくやり方を見つけてください。

■山食パンとは

山食パンてなに?

お馴染みの食パンを、パン型の蓋を開放して焼き上げたものです。対して蓋を閉めたまま焼き上げるものを角食パン(プルマンブレッド)と呼んで区別します。
食パンの発祥はイギリス。フランスのパンドミもアメリカのプルマンブレッドももともとはイギリスから伝わったのだそうです。日本ではこちらの山型の食パンをイギリスパンと呼ぶこともあります。

もともとは生地の配合にも明確な違いがありました。山食パンはシンプルな材料で縦の伸びを意識して作り、少し塩味が効いていて、トースト性が良くさっくりしているもの。対して角食パンはリッチな配合で甘味と内装のしっとりした食感を楽しむもの。現代ではその線引きは曖昧になっているみたい。リッチな配合の山食パンも結構ありますよね。

それぞれの歴史をたどって、今ではどちらも日本の食卓に欠かすことのできないパンになりました。

■材料

強力粉とスキムミルク

よく使う国産小麦は「キタノカオリ」。カナダ産は「スーパーノヴァ」。強力粉はほとんどこのうちのどちらかです。特にキタノカオリは大好きな小麦です。


スキムミルクはいつも変わらずこれです。


発酵バター

発酵バターはカルピスのものです。高千穂の発酵バターもよく使用します。

■道具

ボウルと計量カップ

こねるときはガラスボウル。発酵の具合も全方向から確かめられます。経年劣化の濁りみたいなものも出にくいと思うので、長く使えるのではないでしょうか。私はiwakiのガラスボウルを使用しています。

こんなのあるようで、次はこちらが欲しいです。


本当はHarioも気になっているけど……。


計量カップは無印良品。こちらもガラス製です。品の良い感じでメモリが付いているのでお気に入り。それにやっぱりガラスの手触りが好きです。その前はHarioを使用していました。


スケール

パン作りに欠かせないのはスケール。3kgまで、0.1g単位で計ることができるものをおすすめします。私が使用しているのはタニタのスケールです。

焼き型

アルスター食パン型1斤です。お好みのものでいいと思います。