オーバーナイト発酵で焼く少し甘めの【山食パン】の作り方。

山食パンとは?

お馴染みの食パンを、パン型の蓋を開放して焼き上げたものです。対して蓋を閉めたまま焼き上げるものを角食パン(プルマンブレッド)と呼んで区別します。

もともとは生地の配合にも明確な違いがありました。山食パンとはシンプルな材料で縦の伸びを意識して作り、少し塩味が効いていて、トースト性が良くさっくりしているものを指していたようです。

今ではその区別も曖昧になり、とてもスイートな山食パンもたくさんありますね。今回の山食パンは生地そのものがふんわり甘い配合です。

少しのイーストとはちみつで作ります。

隠し味はカルピス。カルピスの乳酸菌は死滅していますが、生地を弱酸性に整えてくれるので発酵補助剤としていい働きをしてくれます。加えて乳製品の甘みやこくも補ってくれるので、パン作りにはとても良い隠し味です。残念ながらカルピスのそのものの風味は残りませんが、乳酸菌の酸味でイーストが元気に、さらに生地が均一になめらかに仕上がるのでたいへん作りやすいです。おすすめです。

今回の生地は水分量も少なめです。こねているうちに生地温度がゆっくりとあがるにつれて、生地がとろんとしてくるのがわかると思います。

手間取るとしたら油脂の混ぜこみ作業でしょうか。ちょっと油脂が多めのレシピなのです。生地を事前にしっかりこねていればいるほど、油脂が入りにくくて、混ぜこみに時間がかかるかもしれません。でもちゃんとこねられていればこその苦労でもあるので、自信を持ってこねてください。

ミルキーでほんのり甘いパンはみんな大好きですよね。ジャムなんかとも良く合うので、トーストしてのせて食べてみてください。もちろん一番のおすすめはバターとはちみつです!とろけるほどのおいしさですよ!

クラストはこんがりきつね色。クラムはほんのりたまご色。ふわふわで甘い食パン!まさに私のイチオシ!理想の食パンです。

木琴堂チャンネルでは長野県【安曇野養蜂苑】のアカシアはちみつを使用しています。

■Youtube

■材料
—-1斤分 9.5×20×H9.5cm

・強力粉 250g(100%)
・(卵黄1個+牛乳)163g(65%)
・カルピス 12g(5%)
・はちみつ 30g(12%)
・インスタントドライイースト 1g(–)
・塩 5g(2%)
・発酵バター 30g(12%)


焼成
予熱 180℃
焼成 180℃で30分

インスタントドライイーストは金サフです。

オーブンの癖等で焼成温度や時間はかなり変わってきますので、それぞれ調整してください。

■作り方

フローチャート

パン作りの流れをざっとさらいます。おおよその時間割です。ここでの時間割は手ごねで作る場合のものです。ニーダーやスタンドミキサーを使用される場合は、生地の状態を確認しながら作ってください。油脂は少し早めに入れてあげてください。

計量・下準備(5分)

ミキシング(1分)

オートリーズ(30分)

塩追加+ミキシング(10分)

油脂追加+ミキシング(8分)

予備発酵

オーバーナイト発酵

復温

分割、丸め直し(2分)

ベンチタイム(30分)

成形(3分)

二次発酵

焼成(30分)


スイート山食パンの生地管理(確認中)

こねあげ温度
25℃

予備発酵(一次発酵/フロアタイム)
25〜28℃、湿度70%以上、確認中

最終発酵(二次発酵/ホイロ)
30℃、湿度70%以上、確認中

あくまでも目安です。要所、要所で、生地の温度や質感を見極めてください。

■工程

上記のフローチャートに沿って、具体的な工程やポイントを確認しながらパンを焼いていきます。

下準備

イースト液の準備をします

卵黄、牛乳、カルピス、はちみつ、イーストを入れ、よく混ぜます。

水温
生地によりますが、水分の温度は25〜35℃(夏場の室温が高すぎる場合は冷水、冬場の室温が極端に低い場合や機械でこねる場合は40℃強まで)の範囲で調整します。*15℃以下の冷水を使用する場合はインスタントドライイーストは粉類の方に混ぜてあげてくださいね。

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強力粉にイースト液を加え、よく混ぜます。粉っぽさがなくなるまで混ぜたら、生地を30分休ませます(オートリーズ)。

オートリーズ
粉に水分を十分に吸わせ、小麦粉の中のグルテンをある程度育てて、生地の伸びをよくするのに役立ちます。こねの時間を短縮できたり、生地への負荷を減らすことにもなります。乾燥は厳禁です。生地温度が下がりやすいので、温度管理に気を配ってください。

2

塩を加えてこねます。


本来は少しこねたのちに塩を加えるのが理想です。塩を加えると生地が締まりますし、粉の水和やグルテンの形成を邪魔するようです。その前にしっかりとこねて生地を育てておきたいものです。ただ、ここではオートリーズを充分にとっていますし、家庭製パンではそこまでデリケートに考える必要はないと思うので、手順を1つ減らすつもりで、ここで塩を加えています。

こね方のコツ
山食パンは縦にしっかりと伸ばしたい生地なので、しっかりとグルテンを強化します。はじめは生地を縦に伸ばすようにしてこねますが、オートリーズのあとなので、充分に生地につながりができていれば、生地は千切れるのを嫌がり、手の動きにそって丸まろうとすると思います。生地がしっかりとつながりを持つようになるまで縦にこね、つながってきたら、生地を決して千切らずに、体重をかけながら、こね台にこすりつけるようにしてこねます。

生地の見極めのコツ
生地の表面がつるりとしてキメが整います。とろとろと手のひらにそって自在に変化するくらいにやわらかくなっているはずです。手のひらの温度と摩擦で、生地はほんのりと温かくなっていると思います。この状態の生地の感覚を掴むまでは、ここで5〜10分、生地を休ませてからグルテンチェックをします。指紋が透けてみえるくらいに薄く伸びるようになっていれば、準備は整っています。慣れたらこの作業は省いてください。

3

油脂を加えてこねます。

油脂入れのタイミング
油脂を入れるタイミングにはいろんな考え方があります。初心者さんは、まずはこのタイミング(こねあがりの一歩手前)で油脂を入れる、ということだけ経験として覚えておいてください。

油脂の混ぜ込み
油脂をグルテンの隙間に均等に入れこむのには少し時間がかかります。繋がってきたグルテンはちぎると傷んでしまうので、無理に伸ばしすぎてちぎったりしないように心がけます。その際、生地をある程度細かく切って揉み込むと油脂が入りやすいです。可塑性のある油脂も、液体油脂も同様です。液体油脂の方が少し入りにくいですが、10%未満の配合量で手ごねの場合はきちんと入りますので、丁寧に揉みこんで吸収させてあげてください。

生地が油脂を満遍なく吸って、はじめツルツルして台離れの良かった状態から、再びしっとりと手のひらやこね台にはりつくような感触になったら、こねあがりです。山食パンの場合は、この後、生地の仕上げに入ります。

生地の仕上げの叩きごね生地をきらないようにしながら、叩いて伸ばして、折りたたみます。力を入れる必要はないです。①肘の高さくらいから重力に逆らわずに生地をこね台に落とします。②生地の手前両端を引っ張って、奥の生地にかぶせます。③再び生地の手前と奥をつかんで持ち上げ、生地の向きを90℃回転させて、表だった面をこね台に落とします。④生地の手前両端を引っ張って、奥の生地にかぶせます。この繰り返しです。

引っ張りすぎると生地の表面が荒れます。引っ張りすぎず、生地の伸びしろ分だけ伸ばしてたたむ、この繰り返しで生地は大理石のように滑らかになります。生地を切らない、これだけ気をつけてやってみてください。これを何度かやってあげると、さらに生地のつながりが強固なものになって、ぷるんと張りが出て、力がつきます。

こねあげ温度
25〜27℃

4

生地がおおよそ1.5倍になるまで予備発酵(1次発酵)させます。

予備発酵(1次発酵)
オーバーナイト発酵の前に、イーストを活性化させてあげるイメージです。冷蔵庫に入れる前に、しっかりと生地を育てておきます。

5

平たい容器に広げてラップを密着させて、生地が1.5〜2倍に膨らむまでオーバーナイト発酵させます。

オーバーナイト発酵
オーバーナイト発酵(低温長時間発酵)は、やり方は様々ですが、多くは10〜22℃くらいで、10時間保存、24時間保存、などというように指南されている講師さんや書籍が多いかと思います。これって家庭ではかなり難しいです。ですから家庭で行うオーバーナイト発酵は、冷蔵庫の野菜室5〜8℃を使用します。4℃以下の冷蔵庫内ですと酵母はほとんど働けないので、野菜室に入れる訳です。

野菜室ではなく普通の冷蔵庫内で熟成させることもできます。この場合はもっと時間がかかりますし、いくつかの工夫が必要です(イーストを増やしたり、復温時間を長めに取ったりなどなど)。

発酵速度というか、発酵の勢いみたいなものは、生地を冷蔵庫に入れる前の予備発酵や、生地保存中の温度や湿度の他、生地に加えるイーストの量や加水量、糖分、酸素の量や生地の酸度などでも変わってきます。それらを工夫すれば、発酵速度はある程度コントロールすることが可能です。これらをコントロールして、最も適したやり方を探すトライアンドエラーが、オーバーナイト発酵と付き合っていくためには必要かもしれません。

6

生地をこね台に出して、やさしく薄く広げ、復温させます。乾燥厳禁です。必ず固く絞った濡れ布巾などで覆って休ませてください。

復温
生地を室温近くに戻しながら、ゆるやかに酵母を活性化させてあげることです。温度が上がっていくのと、生地をこね台に出すことで軽いガス抜きになるので、新しい酸素が供給され、この間も発酵は進みます。冷たすぎると生地は伸びが悪かったりして傷みやすいので、軽く緩めてあげる意味もあると思います。

生地温度は15℃前後以上に戻るのを目安にしていますが、生地の状態によって対応は変わってきます。冷蔵庫での発酵が思うように進まなかった場合は、ここで時間調整をします。生地の膨らみが足りなければ復温時間を長めに、生地が冷蔵発酵中に2倍を超えて膨らんでいれば、過発酵になってしまうのですぐに分割・丸め直しに入ります。

7

生地を2分割し、丸め直します。綴じ目を下にして、乾燥を防ぐために濡れ布巾などで覆って、20分〜30分のベンチタイムをとります。

ベンチタイム
生地は力を加えると締まります。締まった生地を無理に成形すると傷んでしまうので、生地を休めて緩めてあげるためにベンチタイムをとります。成形が簡単な場合は20分ほどでも充分ですし、成形が複雑で生地に負担をかけやすい場合は30分しっかりと休めてください。

10

生地を成形し、満遍なく油脂を塗った型に入れます。生地が型の8分目までふくらむまで発酵させます。

11

焼成します。

焼き上がったら、腰折れを防ぐため、すぐに型を外側からがんがんとたたき、刺激を加えます。熱いうちに型から外し、ケーキクーラーなどの上で冷ましてください。粗熱が取れたらビニール袋などに入れて保存します。

■山食パン

山食パンてなに?

お馴染みの食パンを、パン型の蓋を開放して焼き上げたものです。対して蓋を閉めたまま焼き上げるものを角食パン(プルマンブレッド)と呼んで区別します。
食パンの発祥はイギリス。フランスのパンドミもアメリカのプルマンブレッドももともとはイギリスから伝わったのだそうです。日本ではこちらの山型の食パンをイギリスパンと呼ぶこともあります。

もともとは生地の配合にも明確な違いがありました。山食パンはシンプルな材料で縦の伸びを意識して作り、少し塩味が効いていて、トースト性が良くさっくりしているもの。対して角食パンはリッチな配合で甘味と内層のしっとりした食感を楽しむもの。現代ではその線引きは曖昧になっているみたい。リッチな配合の山食パンも結構ありますよね。

それぞれの歴史をたどって、今ではどちらも日本の食卓に欠かすことのできないパンになりました。

山食パンはこねて叩いて高さを出そう

こねると生地の中のグルテンは強くなります。こね過ぎには弊害もありますが(小麦や素材の個性が死んでしまって味わいが淡白になりやすいなど)、今回は小麦の旨味そのものだけではなく、はちみつやバターの甘みを味わうパンです。リッチな配合なので高さが出ても淡白に感じることはないかと思います。

生地をさらに鍛え、食パンの高さを出すために、叩きごねを入れています。手ごねでは、手のひらが生地に触れることで、あるいは生地がこね台と擦れる摩擦によって、生地温度があがっていきます。途中、叩きごねを入れてあげることで、生地は程よく冷やされるので、生地温度のコントロールができます。また4回1セット叩きごねをすることで、ひととおり生地の面が整うので、ベタつきが軽減されます。

冬場は生地温度を下げすぎないように気をつけます。生地の伸びが悪くなると生地が傷みやすくなります。

■この生地のポイント

糖分の多い生地なので色づきに注意

とても糖分の多い生地なので焼き色が付きやすいです。普段と同じように焼成するとこんがりしすぎてしまうかも。私の家のオーブンで焼くと、200℃で30分、焼成率11%くらいでも、かなりこんがりと色づきました。今回は「材料」に明記しましたが、焼成率8%です。180℃で焼いています。それでもかなりこんがりですね。

でもこのクラストの焦げ色がまた食欲をそそったりもするので、焼き具合については、みなさんのお好みで調整してみてください。生地自体は翌日になってもぱさついたりはせず、しっとりとしてとてもおいしい生地です。生食で食べても優しい甘みを感じることができると思います。おすすめです。

もちろん普段の食パンのように色を抑えたいなら、低温で焼成する必要があります。焼成時間を伸ばせば生地の中の水分も飛びやすいので、そこだけ気をつけてくださいね。

面倒でも卵黄だけで!

卵黄だけ使うのって、ちょっと面倒ですよね。余った卵白の処理も考えないといけないですし。でも卵白を入れた生地は食感がカサカサしがちです。焼成後の劣化も著しい印象です(←これは私の体感ですけど)。それでもたまごのコクや風味、色づきの良さは欲しいのです。そんなときは卵黄だけを使いましょう。クラストはこんがりきつね色、クラムはほんのりたまご色。ふわふわで甘い食パン!

このレシピは私のイチオシ!

まさに理想の食パンです。

■いつもの決まりごと

手ごねは生地のロスに気をつける

オートリーズ後に塩をふり入れてからの本ごねですが、はじめは生地がベタついても、油脂入れ後には必ずツルツルの綺麗な生地になります。だから途中で手を洗ったりせずに、信じてこねてみてください。

手のひらやこね台にくっついてしまった生地はスケッパーで削ぎ落としながらこねます。手を洗い流して生地をたくさんロスしてしまうと、もったいないだけでなく、分量そのものが変わってしまいます。型に対する分量が変わってしまうと、パンがレシピ通りの大きさで膨らんでくれません。型入れして焼くパンの場合は、特に分量に気をつけます。

オーバーナイト法の生地

冷蔵庫から出したての生地はきちんと発酵していても冷たいままです。そのまま乾燥を防ぎながら、10℃〜15℃にまで生地温度が戻って、さらに生地が期待する大きさに膨らんでくるのを待ちます。これが復温です。

このとき、発酵に利用した容器のまま復温させる場合は、生地の見極めがしやすいです。温度は測ってチェックできますし、大きさは膨らみを目視できます。ただ、この場合、容器が冷たいままですし、生地も広がっていないので復温に時間がかかるとともに、生地の発酵状態にムラが出やすいです。

慣れてきたら、生地をこね台に出して復温させてみてください。優しくパンチを入れて新しい呼吸を促してあげるとともに、そのまま乾燥を防ぎながら10℃〜15℃にまで生地温度が戻って、また全体的にふっくらとしてくるのを待ちます。発酵倍率を確認しにくいんですが、何度か作って慣れてみてください。

オーバーナイト発酵で生地がうまく膨らまない場合

冷蔵庫内の温度が低すぎたり、予備発酵(一次発酵・フロアタイム)が短すぎたりして、生地が充分に膨らんでいなかった場合は、この復温の工程で発酵具合を調節します。

復温時間は室温にもよりますが、1〜2時間ほどかかることもあります。だから早めに生地を冷蔵庫から出して、その間は別の家事を……というように、ご自身の日常生活のもろもろのお仕事と平行でパン作りを行うのがベストです。

オーバーナイト法の利点は、ある程度の「ほったらかし」が許されるところです。

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